2000年

 つぶやき


1/1

◆生き延びた
 2000年なんて,はるか先のことと思っていたのに,あっさりと越してしまった。
 めでたいような気もする。


1/2

◆つまらない
 このミステリーがおもしろい,といった年末の企画記事を参考に
 正月は軽い読み物で楽しもうと本をあれこれ買ってきたが
 なぜかいまいちおもしろくない。
 速読の術が身についているので冊数はこなしているが,ただそれだけ。
 最悪なのは,部屋のすみに積んである過去の読了分も
 開いてみるとどれも読んだ覚えがないような気がすること。
 同じ本を何度も新鮮な気持ちで読めるってのは悪いことでもないか?

◆2000年問題
 世界的な大事件は起きなかったものの,身近に一件。
 ファイルメーカーというソフトで学科の行事日程をつくっているが
 設定を誤ったようで(西暦を下二桁で処理),昨日からWeb上で表示できず。
 鹿児島に戻ったら修正作業をしなくちゃ。


1/3

◆おしごとは
 娘がボーイフレンドの家に遊びに行ったとき(大晦日の夜)
 母親から「お父さんは何を教えてらっしゃるの」と聞かれ
 「よくわかりません」と答えたという。
 「だって,ほんとに知らないんだもん」
 そうかもな〜と思う。
 勉強している姿など見せたことないし,
 研究とかの話もしたことないし……。
 なんだか迫力のない父の後ろ姿。
 それでよいのだとも思う。


1/4

◆首切り
 ある知り合いの話。
 一橋を出て有名銀行に入り,それなりに偉くなったが,結局は出向。
 首切りのようなダーティーワークに取り組んでいる。
 それで経営状態が上向けば,自分は本社に戻れるかもしれない。
 小型のカルロス・ゴーンだね。
 が,首切りは愚策で,従業員の志気は落ち,営業は活性化せず。
 自分の精神状態まで怪しくなりそうだ。
 学校の成績のよかった人間がたどる道のひとつ。
 大学の同窓会には熱心にかかわる。
 楽しかったのは学生時代までだからか。


1/5

◆Web Design Award 99
 優秀なデザインのホームページを紹介しているというので見てみる。
 なんだかな〜。どれも重たいし,冴えないぞ。
 こっちはISDNにつないでいるけど,なかなか絵が出てこない。
 しかし,やがて安価で高速なデータ伝送の方式が普及すると
 こういう「見ばえのよい」ページが評価されるようになるかもしれん。
 軽さばかり追求しているのは,遅れた発想かな。
 重たいデータでも軽々と受信できれば,そりゃ動く絵の方が楽しかろう。
 そういう未来に備えてページづくりのワザを高度化せよ,ってことかな。


1/6

◆仕事始め
 夕方の便で鹿児島にもどってきた。
 さっそくおしごと。
 といっても学科のホームページを少しいじっただけですけど。
 ページが活気づくように教員の数だけ掲示板を設置してるんだが
 期待したほどには書き込みはない。
 掲示板よりメーリングリストを使うようにした方がいいのかな。
 強引に情報を送りつける手口。
 いや,メールさえ読まない(パソコンを起動しない)学生・教員もいるんで
 これもむなしいか。


1/7

◆正当なる保守主義?
 日仏社会学会の年報の編集をしている。(DTP作業)
 来週には印刷にまわさねばならないのに,最後の原稿がようやく届いた。
 で,入力・割りつけの作業をしていると,その論文中にぼくの名前が……。
 論文「コント思想と現代」で筆者(三橋利光・東洋英和女学院大)はいう。

反動とも解釈されうる傾向が後期コント思想を貫いているにもかかわらず,筆者はそのなかから現代社会に適応できるような貴重な示唆を汲み取ろうとし[た]。つまり,コント思想を現代風に再解釈したのである。ところが,後期コント思想の諸傾向を,現代社会の風潮に対する強烈な批判として受けとめることも可能なのである。たとえば,フェミニズム運動への警鐘として,また《正当なる保守主義》への援護として受けとめようとする見解(たとえば,1998年11月3日の日仏社会学会大会[日本大学]における斉藤悦則氏の発言)もあるのである。

 ありゃりゃ。
 ぼくの真意は,いかにも反動っぽいコントをアクロバチックに再解釈するより
 堂々と反動そのものを肯定した方が議論も盛り上がるんじゃないか,ってこと。
 三橋論文によれば,まるでぼく自身が反動みたいじゃん。


1/8

◆変化を求めるな
 何気なく買ったが,リチャード・セネットの本は当たりだったね。
 『それでも新資本主義についていくか』(ダイヤモンド社,99年12月)
 タイトルはセコいが,中身は読ませる。
 18世紀の思想家ディドロの説がこの本の筋立ての重要な柱。
 ルーチンワーク(反復労働)こそが人間性を育てるという考え方。
 反復とリズムを通して,落ち着きと深みのある人間がつくられていく。
 なのに,変化を善と思いこんで,変化への対応に大わらわの現代人。

 「おまえは落ち着きがない」と叱られ続けた小学校時代を思い出す。
 なつかしいお説教を聞かされている感じ。
 いや,案外それが悪くないんだな。(しみじみ)

 今日たまたま買った『マンネリズムのすすめ』(平凡社新書,99年6月)も
 これと響き合い,なかなか上手に読ませてくれた。(著者:丘沢静也)
 力まず,がんばらず,ダラダラとくりかえすことの快楽を説く。
 う〜む,時代の潮目が少し変わってきたような気配だが
 それは時代に乗り遅れてきた鹿児島がトップランナーに化けるってことかい?


1/9

◆外は灰まじりの雨
 3連休の中日だけど,研究室にこもっている。
 研究に励んでいる……わけではない。
 ほかに行く所がないし,ここが一番暖かく,居心地がいいから。
 スーパーでお弁当を買って,ぼそぼそと孤独に食事(昼も夕も)。
 食後はうたた寝。
 実態はともかく,傍目には「いつも勉強ばかりしている」ように見える。
 そういう誤解は大事にしなきゃね。


1/10

◆晴れの日は悲しい
 本日は快晴で,しかも暖かい。
 こういう日は外で遊ぶのが正しいのに,このごろは出歩く気力が……。
 この気力のなさが淋しいのだ。
 ジジむさく,背中を丸め,自分の靴先を眺めて日を過ごす。


1/11

◆人望篤く?
 管理職(学科長とか)の改選の時期が近づいた。
 任期はいずれも2年なんだが,ぼくは変則的ながら学科長を3年も務めた。
 その間にけっこう「成長」したような気がする。
 平衡感覚を身につけたらしく,ある人々はそれを「堕落」と呼ぶ。
 一方,他の人々は「斉藤は大人になった」と評する。
 おかげで,またしても管理職にノミネートされかねない雰囲気。
 数年前,「斉藤を教授にするのは反対」という動きがあったことを思えば
 ちょっと様子が変わったのか。
 ただ,管理職は苦役で,処罰的な性格を帯びている点から
 なるほど,と妙にうなずける気もする。


1/12

◆取材を受けた
 地元の南日本新聞に連載されている「かごしま人紀行」に
 県立短大の教員が紹介されることになった。
 そこで紹介される教員の一人に加えられる。
 商経学科の存在をアピールするために承諾したのだ。
 鹿児島県民にとって南日本新聞はかなり権威があるので
 そこで紹介されれば「立派な先生」という評価が得られるかもしれない。
 立派な先生が揃う商経学科というイメージ,これが大事だと思った。
 だから,できるだけ偉そぶって取材を受けた。
 こうやって,品性もだんだんと下がっていく。


1/13

◆取材が続く
 南日本新聞の別の記者から取材を受けた。
 今度は夜間部の紹介記事のため。
 鹿児島県で唯一の夜間大学である商経学科の有用性をアピールする。
 年末には本学の就職率の高さが紹介されたし
 来週からは商経学科の教員の随筆が連載されるし,で
 だんだんと知名度もアップしていくものと期待される。
 学科長としては狙いどおりの流れに満足,満足。


1/14

◆Over-Booking
 来週(17〜19日)ソウルに行く。ゼミ旅行(1年7人,2年2人)だ。
 2泊3日で1万9800円は安い。(ホテル代込み)
 ところが大韓航空は鹿児島・ソウル間の航空券をオーバーセール。
 帰りの便は座席が50ほど不足するらしい。
 というので,われわれは別便(プサン・福岡経由)へ振り替え。
 その「お詫び」に宿泊ホテルが格上げされた。
 ビジネスホテルから最高級ホテル(Hotel Lotte)へ。
 しかもディナーショー付きだ。

 ただし,本来なら19日の午前11時に鹿児島に戻れたはずが
 17時の到着となって,学生たちは午後の授業に間に合わない。
 出欠チェックが厳しい授業(体育)なので,少し困ったことに。

◆地域研究所所長に
 案の定というか,4月からも管理職のしごとが続くことになった。
 来年度は建学50周年にあたり,ちょっとしたお祭をするため
 その準備から運営までの「ちからしごと」をやらされそう。
 所長といっても,助手とか事務官がつくわけではない。
 (よその大学の研究所とは大違い)
 部下なしの,名前だけの管理職。
 笑っちゃうね。


1/15

◆新機種選定
 研究室のパソコンはリースによるものだが
 まもなく機種を変えてよいことになった。(現在はPowerMac 9500)
 こんどはノート型にしたいな。
 PowerBookの新型(開発コード名:pismo)が欲しい。


1/16

◆学会年報印刷準備
 とっくにDTP作業は完了し,あとは印刷屋にまかせればよいのだが
 学内業務に追われ,印刷屋と交渉するヒマがなかった。
 と,一人の執筆者から「遅くなりましたが」と原稿訂正願いが来たので
 ま,いいか,と承諾し,ようやく今日その訂正原稿を受け取った。
 さっそくデータを訂正。(われながらテキパキとした仕事ぶり)
 が,今日は日曜日。そして,明日からぼくは韓国旅行だ。
 どうしても印刷遅れを取り戻すことができない。


1/19

◆ソウルから帰ってきました
 韓国は3回目(前にプサン1回,ソウル1回)なので
 ちょっと冒険をするつもりでいたが,結局そこらへんを歩いただけ。
 冒険といえば,最後の夜に入った屋台でボラれて泣いたことぐらい。
 日本でこのごろ有名なNanta(パフォーマンス集団)の舞台も見たかった。
 イベントガイドに紹介されていたが,いま日本で公演中の集団の2軍かな?
 劇場は遠くなかったが,これも結局見ずじまい。
 初日,ウォーカーヒルのカジノでディナーショーを見たが
 (あのー,これは旅行会社のサービスによるもの)
 民族舞踊は外国人観光客向けのものながら楽しめた。
 学生たちは第二部のマジックショーの方がおもしろかったみたい。
 女性ダンサーのヌードに「あっ,乳出しだ〜!」だと。


1/20

◆モニターの故障
 自宅のパソコンのモニター(Apple Vision 17)が壊れた。
 画面が黒いままで何も映らない。
 学科が保有しているマックのモニターも2台が同じ故障。
 どうもいかんな〜。
 自宅では,旧式のモニター(13 inch)を引っぱり出して使っている。
 研究室では17 inch から,さらには19 inch へとグレードアップしてきたので
 大型画面に慣れた目から見れば13 inch はひどく小さく,作業能率も低下。


1/21

◆印刷費
 学会年報の印刷で業者(日本高速印刷・鹿児島支店)と交渉。
 90ページのものを300部。さらに5つの論文抜刷を各50部。
 これで9万円(税抜き)
 安い! 今まで8号を手がけてきたが,30万円を下回ることなし。
 それが一挙に一桁だ。
 送料を含めても10万円を下回る。
 小さな(かつ貧乏な)学会なので大いに助かる。


1/22

◆電気毛布
 鹿児島もかなり寒くなってきたので,いよいよ電気毛布の出番。
 夜,フトンに入るときのしみじみとした暖かさ。
 よく眠れます。


1/23

◆妹よ
 四国にいる妹がパソコンを買いたいという。
 久しく会わないが電話の声では元気なオバサンの感じ。
 パソコンについて助言してくれそうな人が周囲にいないらしい。
 iMacかiBookを買うように勧めた。
 マックならぼくが助言できるからだ。
 とにかく妹がEメールできるようになれば
 ついにわが「門中」も電網で結ばれることになる。


1/24

◆機種選定(2)
 通販でモニター(Nanao の19inch,T760)を買うことにした。
 今朝,店(PC-Success)にお金を振り込んだが,品物が届くまで心配だな。

 4月から研究室におくパソコンの機種も決めなければならない。
 1月中に決めなければ間に合わないというんだが
 今はちょうどモデルチェンジの時期だけにいっそう悩ましい。
 けっきょくPowerMac G4/350に決めた。
 PowerBookだと,ぜったいに新しいのが出て,泣きを見そうだから。


1/25

◆スターリン言語学
 田中克彦『「スターリン言語学」精読』(岩波現代文庫,2000年1月)は
 ぼくにとって,いわゆる目ウロコ本だった。
 民族や国家といったものは,大学生のころからよくわからぬまま
 齢を重ねてきたが,この本でいくつかの疑問が氷解したような気分。
 ああ,昔だったら(学生・院生時代だったら)
 身近に読後感を語り合える仲間がいたんだけどな〜。
 いまは一人で興奮し,ムズムズしているばかり。


1/26

◆新機種の話は幻
 4月から新しいパソコンが研究室に入ると喜んでいたが
 会計処理上の問題で話は流れた。
 はしゃいだ分だけむなしい。


1/27

◆新品より高い修理代
 故障したプリンター(OKI のMicroline 8W)を修理に出していたが
 今日返事が来て,「修理代は4万6千円」との見積もり。
 え〜! 新品で買っても3万6千円だよ。
 もう廃棄してくれ,と言ったら,それはお客様の方で,と言われた。


1/28

◆大学白書2000
 という特集を載せた雑誌『週刊東洋経済』を飛行機の中で読む。
 大学も経営努力が必要,ってのはそろそろ耳タコだが
 鹿児島県はそんなことをわれわれに迫ったりしない。
 極楽,極楽,ってか?


1/29

◆早大ネットワークセンターで
 大学における新しい型の情報教育についてのシンポジウム。
 何かいい話が聞けると期待していたのに,どの報告もおそまつ。
 情報教育でプレゼンテーションの仕方をおしえるという人の
 Power Pointが上手に動かない。(Restartでまた時間をくう)
 しかも,色使いも悪く,文字が背景色が重なって,読めない。
 Critical Thinking(批判的思考)を教えるという人は
 ただExcelで事象を数値化することが「正しい」というばかり。
 『統計でウソをつく方法』という本を読みなおせと言ってやりたかった。
 パソコンで日本語教育を担当しているという人は
 フロアから「コンテンツとかリテラシーって何ですか?」と質問。
 初歩的な質問だから,何かヒネリがあるのかなと思ったら
 どうやら本気のようだった。
 だって,真っ正直な答えにうなずいていたから。
 早稲田ってのはやっぱり遅れているなと痛感させられた。


1/30

◆小砂眼入
 「ほこりが目に入った」と普通にいえばいいのに
 それを「小砂眼入す」と難しそうに言いかえる学者気取り。
 これはある落語(演題は忘れた)に出てくる。

 新刊の岩波新書『翻訳はいかにあるべきか』(柳瀬尚紀)は
 この「小砂眼入」という言葉を多用し,わざわざ一章を割く。
 しかし,語義の解釈は異なる。
 柳瀬は明治時代のある翻訳批評「訳文は小砂眼入調」を引用し
 それを,小さな砂粒が眼に入って,ものがよく見えない状態と解す。
 この解釈は間違ってると思い,投書しようかとも思ったが
 もとの落語の演題を調べなきゃならんので,面倒だし
 この程度のことは別のおせっかい野郎が指摘するだろうから
 一人苦笑するにとどめた。


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