2004年
 つぶやき

5/1
◆精神科医の異常
 下田治美『精神科医はいらない』を機内で読む。
 この文庫本の解説者(精神科医)は
 正常と異常は区別不能といい、自らの異常を語る。
私自身にも歴然たる異常がある。
閃輝暗点といって、ちゃんと眼科や精神科の教科書に出ている。
突然小さな一点がきらめくようになり、
もちろんそこは見えなくなるのだが
そのうちそれがだんだんと広がってゆく。
丸鋸のような形に変わりながら広がってゆく。
真ん中はもう見えるようになっているが、
丸鋸のように動いているところは
見えなく(暗点に)なっている。
30分もしたら何ともなくなる。
 そんなに自慢するほどの話じゃないと思うけどね。

5/2
◆生命力
 連休中はバーサンのデイケアも休みだ。
 つまり、ずっとバーサンといっしょってこと。
 また、毛が抜けて小汚い老犬の散歩もぼくのしごと。
 バーサンも犬もけっこう食欲旺盛だから不思議だ。

5/3
◆読書に淫する
 本屋と古本屋をまわれば読みたい本ばかり。
 じっさい、書くに値することがらは
 すでにことごとく他の人によって書かれている。
 で、ついつい、しこたま本を買ってしまった。
 翻訳のしごとをしなきゃと思いながら
 関係のない本ばかり読んでいる。

5/4
◆下の世話
 赤ちゃんのウンチでさえ苦手だったぼくだ。
 バーサンの脱糞さわぎには逃げ出したくなる。
 いつかは我が身と、わかっちゃいるんですがね。

5/5
◆スーツ
 1度しか着てない服が2着もみつかった。
 身内の葬式のときにあわてて買った地味服。
 ふだん背広なんか着ないから忘れていた。
 立川のデパートで買ったものなので
 鹿児島の「青山」で買ったものより上等だ。
 しかし,やはり着る機会はめったになさそう。

5/6
◆村(ソン……谷岡ヤスジ風に)
 鹿児島空港近くの溝部町営銭湯に行く。(200円)
 「ふれあい館」という名前からすでに田舎臭い。
 小さな浴槽と狭い洗い場に村人があふれ
 文字どおり肌と肌を触れ合っていた。
 その濃厚さ=なつかしいような、うっとうしいような。

5/7
◆知識人
 ブルデュー研究者、紀葉子さん(東洋大学)は善人である。
 鹿児島国際大三教授を支援する会が開いたシンポジウムで
 「大学教員はもっと言挙げせよ」と呼びかけた。
 人々は目隠しをされたまま不利な状況に置かれている。
 知識人は啓蒙のために「暴力的に」介入すべきである。
 大学教員は学生に価値観を押しつけるのが正しい。
 と、衒い(てらい)もなく言い切る。
 う〜む、世の中はまたグルリと一回転したみたい。

 参考:『いま大学で何がおきているか』2004、かもがわ出版


5/8
◆ボケ
 夕方、近所のスーパーで買い物しての帰り道。
 ふと気づけばスーパーのカゴを手に下げて歩いている。
 レジで金を払ってそのまま店を出たわけだ。
 きっと何か考えごとをしていたせいだろうが
 何を考えこんでいたのやら、もう思い出せない。

5/9
◆遠隔指導
 わが家の無線LANが不調だという。
 電話でアドバイスし、修復を試みてもらうが
 やはりラチがあかない。
 パソコン4台のLANゆえ問題は深刻だ。
 どうしたものかと悩みながら一晩をすごす。
 翌日聞くと「電源を入れ直したら復調した」とのこと。
 機械の故障は叩けば直る、の説は正しい?

5/10
◆シネマクラブ
 街の映画館の会員だが、4月末で期限切れ。
 日曜日の夕方、映画を観ようと出かけたが
 更新事務は5時までです、と窓口嬢は冷たい。
 期限切れの人には会員割引もできないという。
 300円分の割引をえようとこちらも食い下がる。
 雨の中、バスで街まで来たので、おめおめ帰れぬ。
 必ず更新しますから、と頭を下げてもダメ。
 映画はあきらめ、三越地下で買い物して帰る。
 フランスパン、チーズ、安ワインの3点セット。

5/11
◆歴史ロマネスク回廊
 家の前の道路にギョーギョーしい名前がついた。
 設置された案内板もなかなか立派だ。
 その上にプリントされた古地図によれば
 なるほど昔はここが鹿児島の中心地であった。
 ちょっとうれしい。

5/12
◆ファシリテーター
 会議のやり方を変えれば会社も元気になるらしい。
 かつては「短時間で効率的に」が求められたが
 会議での発言参加をとおして社員を成長させ
 さらに全体の活性化も狙うのが最近の風潮。
 消極的・否定的な者をも会議に巻き込むような
 進行役の働きが重要で、その育成に会社も励んでいる。
 うちのゼミでも学生の「会議力」を育てたいが
 教員自身に「会議力」がないことを思うと
 いささかおこがましいかな。
 ノリの悪い者をすぐに見捨てるようじゃダメだ。

5/13
◆浮世風呂
 午後の4時ごろ、学校近くの銭湯に行く。
 明るい陽光が浴場にもあふれて
 この時間帯に入浴できる幸福感をつのらせる。

5/14
◆安価DVD
 本屋のワゴンセールで映画「踊る大紐育」の DVD を買う。
 新品で500円は安い、と飛びついたが
 観てみると画質が最悪で、やはり安物は安物。

5/15
◆組合アンケート
 教員の組合の総会が近いので、要求アンケートをとる。
 回答は半分以上メールで得られ、まとめるのも楽だった。
 うちの組合は全員加盟ゆえ親睦活動も重要だが
 回答を読むと「親睦行事を望まぬ」者が2名いる。
 和を貴ばぬ人の存在は理論的には貴重だが
 情のレベルではいささかうっとうしい。
 なんて思うようじゃ、まだまだ人間ができとらん。

5/16
◆保存食
 冷凍食品半額セールのとき買ったのがたまっている。
 買ったのを忘れてもいた。
 外は大雨の日にこそ使わねば、と
 スパゲッティをレンジでチンする。
 味はともかく、食感はヌチャヌチャ。

5/17
◆菱山泉
 なぜか鹿児島国際大の理事長にまでなったが
 学長をしていた時代に3人の教員の首を切った。
 今日、その解雇事件の裁判で、菱山氏自らが証人となる。
 人の生活権を奪った立派な理由を示してくれるはず
 と期待したが、残念ながら今日のところ聞けず。

5/18
◆芥川龍之介と閃輝暗点
 養老孟司『身体の文学史』を100円古本で買う。
 薄い文庫本だが、これは当たりだったね。
 このごろ歴史学者の阿部謹也なども文学を語りたがり
 ああいう門外漢の文学論はしばしば片腹痛い。
 しかし、解剖学者の養老孟司の語りはいささか趣きが違う。
 門外漢ならではの卓見らしきものが随所にある。
 下の引用はそういう部分ではないが、ちょっとおもしろい。
晩年の芥川は『歯車』を目に見る。
医学ではそれは閃輝暗点と呼ばれ
いまでは単純な神経疲労に過ぎないと見なされる。
しかし、かれはそれを狂気の兆候ととった。
目が芥川を生み出し、目がかれを滅ぼす。

5/19
◆食パン
 街のパン屋で買った食パンがおいしい。
 スーパーで買うのと大違いだと知る。
 この小発見で、毎朝しみじみとしている。

5/20
◆忙殺
 管理職をやめたらヒマになるはずだった。
 ところが何だか自分で仕事を作ってしまう。
 組合の役員になって機関紙づくりに励んだり
 学生による授業評価(しかも他人の講義)を
 毎回(つまり毎週)Web公開したり……。
 それを歓迎する人があまりいないのもめでたい。
 一方、翻訳の仕事は滞っている。

5/21
◆東京ラーメン
 用事で鹿児島大学に行った帰り、ラーメン屋に寄る。
 最近できた「東池袋大勝軒」には店外にも行列。
 車でしか行けないような場所なので
 やはり、というべきか男女のカップルが多い。
 男たちはつけそばタイプのラーメンを注文して
 その珍しさで会話を弾ませようという魂胆だろう。
 と一人ひがみながら普通のラーメンを黙々と食す。

5/22
◆傍若無人
 夜10時すぎ、東京駅から中央線に乗る。
 満員の車中で会話するオヤジたちがうるさい。
 仲間内の話を大声で楽しげにやりあっている。
 まことにイヤな感じだが
 ひょっとしたら、あれはぼく自身の姿か。
 そう思うと、ますますおぞましい。

5/23
◆切腹の美学
 フランス社会学の研究会でロシア人女性の発表を聞く。
 奈良女子大の院生で、日本語は達者。
 フランス社会学を道具に日本文化の分析を試みる。
 久しぶりに「滅びの美学」なんて言葉を聞いた。
 もちろん発表者は先生方からつっこまれる。
 しかし彼女は全然めげず、そのあたりはジャパナイズ不足。

5/24
◆機内にて
 鹿児島にもどる機内でノートパソコンを開ける。
 人前でのPC作業は恥ずかしい行為だが
 今日はほとんど乗客がいないので平気だ。
 と、ここまで書いたら、まもなく着陸だと。

5/25
◆姶良町(あいらちょう)
 空港から鹿児島市内への帰路に一般道路を選ぶ。
 いつも高速道路なので、たまには違う道を走りたい。
 途中で「サンピアあいら」という温泉に立ち寄る。
 厚生年金事業振興団の施設で、入湯料310円。
 人件費節約のせいか、お湯の清潔度が低い。
 長いこと入れ替えてない感じがする。
 経営団体の名前からしてすでに怪しい。
 それでも販売コーナーで地元野菜を買って帰る。

5/26
◆愛の新世界
 社会思想史の講義でフーリエの情念引力の話をした。
 下の引用は学生に提出させた感想文から。
今日の話、好きですねー。
気持ちいいことしたいって、その通り、
同じことをずっとやるのムリって、その通り。
移り気……ってこわいですよね。
あたし1週間前にフラレてるんですよ。
でも、その2日後には別の人とセックスしてます。
前の人のことはコロっと忘れちゃって。
どうしたんだ私 !? って感じですかね。
きっと後悔とかするんだろうなって思うのに
またやっちゃうんですよねー。
だって気持ちいいんだもん(笑)

5/27
◆陸游(Lu You)
 結婚したとき大学院の指導教官に仲人役を頼んだ。
 先生の祝辞は陸游の漢詩の紹介と解説が柱だった。
 先生もインテリだね〜、と感心させられたことと
 陸游という名前のほかには、もう何も覚えていない。
 話の中身はもちろん、詩の題も、その断片さえも思い出せない。
 最近、陸游についての本が出たと何かで知り
 その瞬間は「読まなくちゃ」と思いながら
 数日を経たら、本の名も、何で知ったかもを忘れた。

5/28
◆タオルケット
 使うのはやはりまだ早かったか。
 鹿児島でも明け方には寒すぎる。

5/29
◆8ミリ映画
 幼稚園から高校までいっしょだった旧友と会う。
 医者の学会で鹿児島に来たのだ。
 自作のDVDを「おみやげ」にもらう。
 学生時代の自主製作映画をデジタル化したもの。
 しょーもないといえばしょーもない作品だが
 60年代の乗り物やファッションは懐かしい。

5/30
◆飛行艇
 旧友と彼の医者仲間1名をつれて鹿児島観光。
 連中はプラモデル愛好家で、ちょっと兵器オタクだ。
 鹿屋に戦前の飛行艇が運ばれてきた話をしたら
 二人は「二式大艇だ。ぜひ見たい」と狂喜する。
 で、当初予定した南薩周遊をやめて鹿屋に向かう。
 自衛隊基地内に展示された飛行機のあれこれ
 そこの博物館の展示物あれこれを
 彼らはじっくり眺め、うんちくを語り合い
 これで一日が費やされてしまった。

5/31
◆長崎大学の68年闘争
 旧友からもらったDVD所収の自主製作映画を一通り観る。
 劇映画はしょーもないが記録映画はよかった。
 68〜69年、彼がいた大学の学園闘争の記録だ。
 友人は「全学闘」の側から撮影している。
 編集が下手っぽいので、話はよく理解できないが
 ぼくも同時代を生きた人間ゆえ想像力で補う。
 学生どうしの激突シーンは生々しくて、心が痛む。

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