2005年
 つぶやき

5/1
◆歓待
 上京したが、家には鍵がかかっていた。
 裏口にまわって入る。
 夕方まで、家の者は全員ルスらしい。
 犬だけが尻尾を振ってくれる。

5/2
◆ Y tu mama tambien(= And your mother, too)
 DVDで『天国の口、終りの楽園』(02、墨)を観る。
 主人公の性欲少年は、あれれ、ゲバラじゃないか。
 つまり『モーターサイクル・ダイアリーズ』の主役だ。
 どちらの映画も人間成長の物語でなかなか良い。
 しかし『天国の口……』は家では観づらい。
 いわゆる「下品な」場面が多いので
 寓居する幼児らが居間に来るたび中断。

5/3
◆スタミナ丼
 1日の深夜、久しぶりに親子5人がそろった。
 しかし、2日の朝、家にいるのはぼくだけ。
 昼、台所をあさっても食べる物なし。
 ふと国立名物「スタどん」が食べたくなった。
 あれは吐くほどまずい、という人もいるが
 店はつぶれるどころか、支店を増やしている。
 豚肉にニンニク醤油をかけて炒め
 山盛りのご飯にのせて、生卵をそえる。
 客は若者ばかりだが、ぼくも並んでガシガシ平らげた。

5/4
◆ヴィルレ(Jacques Villeret)
 フランスの喜劇役者だが、今年1月、53歳で死亡。
 DVD で『ピエロの赤い鼻』(02)を観た後
 インターネットで検索してそれを知った。
 問題は彼の名前の読み方である。
 映画配給会社のサイトには「ヴィユレ」とある。
 ille をイユと読むのはいかにもフランス通だ。
 しかし、ville、mille、gille は例外のはず。
 フランス語に強いことを誇る配給会社が
 Villeret をヴィユレと呼ぶので弱っちゃう。

5/5
◆微熱
 庭仕事をしていた奥さんは「暑い」というが
 ぼくは何だか寒気がしてコタツを引き出す。
 それでも体温は36度前後だ。
 奥さんは「何よ、バカッ」という目つきをする。
 夕方になって37度を超えたので
 ぼくは「ほら、どうだ」と胸を張る。

5/6
◆三角巾
 鹿児島に戻れば「受講者決定」のハガキが届いていた。
 郊外の公民館の「男性の家庭料理」教室だ。
 街中の中央公民館の講座には落選したが
 今度はめでたく当選した。
 ここでも応募者は2倍を超えたという。(定員20名)
 教室は隔週の金曜、午前中に開かれる。
 エプロン、三角巾、ふきん3枚を持参せよとのこと。
 さて、どこで調達しようかしら。

5/7
◆なめくじ
 梅雨はまだだというのに、早くも出現してきた。
 台所に3匹いたが、本番はこれからだ。
 7月に中国人の学生がショートステイで
 この家に一人泊まりに来るかもしれない。
 裕福な家庭の子なら、なめくじなんか知らんだろう。
 日本式の「ビンボー」を生で体験させてあげよう。

5/8
◆ Kago MUG(Mac User Group)
 マックの新しいOS(Tiger)をインストールした。
 案の定(というのも変だが)マシンの動きがおかしい。
 そうだ、7日はちょうどマックユーザーの例会の日。
 そこへ行けば誰かが良策を授けてくれるだろう。
 こうしてぼくは会に初めて顔を出した。
 集まりは二十数名、会場が狭い分だけ盛況の感。
 Tiger の問題はその場では解決しなかったが
 マックの新しい楽しみ方をあれこれ学んだ。
 ただし、次回も参加するかどうかは微妙。

5/9
◆ Art Market
 鹿児島のプチ芸術家たちの作品展示即売会に行く。
 いつもは閑散としている県民交流センターに
 人があふれていたので驚く。
 出店の数も予想を超える多さだ。
 ちょっとワクワクしながら観て回る。
 しかし、足を立ち止まらせる作品はなかった。
 一つだけ、オッと思ったのはあるが
 それはリアルな裸の絵だったからにすぎない。
 考えてみれば、驚きを期待するのがまちがいであった。
 鹿児島には「とんがった」人も芸術作品もない。
 そういう人は鹿児島を離れることになっている。
 作品については、山奥の「アートの森」を除けば
 美術館は微温的で凡庸なものしか並べない。

5/10
◆老化現象
 朝6時前に起きると、その夜は10時に就床。
 すると次の日は朝5時前に目が覚めたりする。
 若い頃とは逆向きに、生活時間がズレていく。
 そして、今日は午前3時に目が覚めた。

5/11
◆ほめ言葉
 ブルデューについて書いたものが活字化されたので
 また叱られるのを承知で昔の恩師に送る。
 20代を通して世話になった先生だが
 いまだに一度もおほめにあずかったことがない。
 今度も「まじめに研究せよ」と叱られるかと思いきや
 いただいたお返事におほめの言葉があったので驚く。
 「活き活きとした好短編エッセー」とある。
 論文になっとらんぞ、のお叱りとも読めるが
 それなら想定内なので驚かぬ。
 エッセーの本義は「随筆」でなく「試論」だから
 ぼくは勝手にほめ言葉と受けとめた。
 おかげで一日いい気分ですごす。

5/12
◆出会い系
 夜間部のゼミ生とビジネスアイデアをひねる。
 風俗系もタブー視しないことにしたら
 男女の出会いをセットする商売が浮かぶ。
 もちろん「健全な」出会いというのミソ。
 怪しさ、いかがわしさをいかに消去するか。
 スーフリの二の舞いになってはいけない。
 スーパーフリーの事件を知らない学生もいたが。

5/13
◆梅干し入りラーメン
 桜島フェリー乗り場の近くに新しい食堂街ができた。
 ドルフィンポートという名の大型施設だ。
 いまはまだ珍しいので、かなり客は来ているが
 くりかえし訪れたい施設でもなく
 秋ごろにはゴースト化しそうな気配だ。
 とはいえ、ぼくは視察と称して、二日連続で行く。
 初日は筑豊ラーメン、二日目は鹿屋ラーメンを食べた。
 後者の塩ラーメンには大粒の梅干しが乗る。

5/14
◆ラウンジ
 鹿児島空港のラウンジを利用する。
 公立学校共済のカードを見せれば入れる。
 ただ、飲み物1杯まで無料、ってのがセコイ。
 いまや学校の近くの和菓子屋(明石屋)でさえ
 店内のコーヒーサーバーは利用自由だぜ。
 おまけにこのラウンジにゃ無線LANもない。
 Air Edge の電波も届かない。
 だから自前のノートPCでメールも打てない。

5/15
◆東京の路地裏
 学会の用事で恵比寿に行った。
 時間に余裕があったので住宅地の裏道を散策。
 思えば昔、受験のため初めて上京したとき
 こういう路地裏で立ち話する老人たちが
 東京弁でしゃべっているのに驚いた。
 落語で聞くのと同じだ〜、と感激した田舎者。

5/16
◆地銀の副頭取
 高校・大学と同窓の男に鹿児島空港で遭遇した。
 東京からの同じ便に乗っていたらしい。
 声をかけると「あ〜あ、嫌な予感がしたんだ」とつれない。
 ぼくは歩きながら学生の起業アイデアを語った。
 起業ブームも退潮気味で、全国的に死屍累々だが
 だからこそ軽い成功例を鹿児島で作ろうぜ、と持ちかけた。
 ヤツはあまり興味を示さず「また電話してよ」で終わり。

5/17
◆同胞
 ぼくの妹には子どもがなく、姉には娘が一人。
 つまり、ぼくを「おじさん」と呼べる人間は
 この世に一人しかいないのである。
 その唯一の姪が結婚するという。
 ぼくが姉や妹と会えるのは冠婚葬祭のときだけだ。
 だから、二十年ぶりぐらいに再会の場ができる。
 一昨日、電話で話したが、それも何年ぶりだろう。

5/18
◆ブログ
 鹿児島国際大を解雇された3教授の身分を守る会に出た。
 県内の大学人を中心とした集まりである。
 8月末に裁判の判決が下るが、それはちょうど夏休み中。
 大学の教員たちが出払ってしまう時期にあたる。
 人々を集めるのはもちろん、ニュースの配布すらむずかしい。
 そのあたりをどうするか、「守る会」で議論した。
 ぼくが「このごろ流行のブログで発信したら」と提案すると
 わずか一名を除き、誰もブログなるものを知らない。
 学者ってのは流行に無関心、という図柄そのまま。

5/19
◆むずかしい話
 看護専門学校で非常勤講師を始めて一ヶ月。
 相手は1年生ゆえ、最初の1〜2回は順調だった。
 いまは連中も慣れて、半数近くが居眠りをする。
 こちらがちょっと小むずかしい話をすると
 まるでそれを合図に彼らは机につっぷしだす。
 それでもまだ半数以上は起きているから
 授業としては大成功というべきか。

5/20
◆『貧困の哲学』
 プルードンの主著を翻訳したいと考えている。
 昔、藤原書店の社長から励まされたので
 一度は取りかかりながら長く中断したままだ。
 なのに自分のサイトでは「翻訳予定」を公言している。
 誰かがそれを見て書店に問い合わせたらしい。
 その方にも、また書店にも迷惑をかけてしまった。
 翻訳作業の再開もいつのことやら、というのが実状。

5/21
◆男の料理教室
 公民館の調理実習室にオヤジたちが集まる。
 ぼくが最年少って感じの高齢者集団だ。
 1班6人だが、さすがにこれは多すぎる。
 作業分担するしかないので全体の手順がつかめない。
 一方、火をとめる係を決めてなかったので
 煮物が焦げてしまった。
 先生は調味料の分量をこまかく指示したのに
 ぼくと同班のオヤジは水を「適当に」足していた。
 てなぐあいに、何が何だかよくわからぬまま終了。
 それでもできあがった料理はそこそこおいしい。
 青魚の油揚げ巻き、茶巾寿司、味噌汁。

5/22
◆ Lovers' Lane
 一橋大小平分校と津田塾大との間にある小径。
 二つの学校内にはそれぞれ学生寮があり
 ぼくも2年間、この道を何度も行き来した。
 三十数年ぶりに歩いてみると意外に長い。
 昔は人としゃべりながら歩いたせいかな。
 いまは五月の緑のなかを、一人で歩く。
 学生時代の友人の葬儀に向かうためである。

◆フランス社会経済研究会
 午後は国立市の一橋大での研究会に出る。
 かつての恩師が報告をするというので
 全国から「弟子筋」が集まった。
 75歳を超えた先生のスピーチは2時間半で
 質疑応答がこれまた2時間。
 先生のタフさに一同感心する。
 いわゆる学問的情熱のほとばしりに触れると
 ぼくも「原点回帰」すべきかな、とも思われた。


5/23
◆ラーメンスクエア
 JR立川駅の南口は新しいモノレール駅と接する。
 その出口横にラーメン村がある。
 どの店にも客が長蛇の列。
 鹿児島ラーメンの店にも客がいた。
 鹿児島ラーメンごときに、と言うなかれ。
 別の店のラーメンもさほどうまかないのである。

5/24
◆愛想
 鹿児島市の丘陵にたつ団地の商店街に行く。
 タウン誌で知った定食屋が目当てである。
 あいにく定休日だった。
 むなしく帰るのも業腹なので、近所の豚カツ屋に入る。
 入ってすぐ後悔した。
 愛想の悪さを売りにしているような店だ。
 それは職人気質というより、鹿児島人気質か。
 それを居心地良いと感じれば、ぼくも一人前なのだが。

5/25
◆見ぬもの清し
 鹿児島アリーナ(体育施設)近くの定食屋に行く。
 連日の外食で、いわゆるランチジプシー。
 この店の客は大半が常連のようであった。
 日替り定食は野菜炒め+ご飯+うどん=600円。
 カウンター席からは調理のようすが見える。
 店のオバサンは少し不器用で
 ゆがいたうどんを複数の丼に移すとき失敗した。
 うどんはステンレスの調理台にこぼれる。
 オバサンは平然と手ですくって丼に入れた。
 あたかもそれが普段の手順のようだ。
 常連のオヤジたちは座敷席でおしゃべりに夢中。

5/26
◆市との連携
 鹿児島市役所の企業振興課に出向いた。
 市からの依頼で、ゼミ生たちに通行人調査をさせるが
 その具体的な内容を聞くためである。
 商店街活性化の一端を担う、といえば美しいが
 アンケートの項目などはすでにできあがっているので
 ぼくの役割は人員調達(周旋屋)にすぎない。

5/27
◆哲学するか?
 スペイン映画「海を飛ぶ夢」Mar adentro を観る。
 四肢麻痺者が尊厳死を求める物語。
 重たい話だが、ちゃんと映画になっていた。
 20代半ばからの二十数年は寝たきりで
 頭脳の活動のみがその人の自由のすべてだ。
 詩作をしたり哲学したり……
 う〜む、ぼくだったら終日妄想にとどまりそう。

5/28
◆適度な距離感?
 学会(経済学史学会)に出るため大阪に来た。
 じつは息子も別の学会で大阪に来ている。
 とはいえ、どこに泊まっているのか知らない。
 息子は学会で発表するというが、そのテーマも知らない。
 息子の属する学会の名前すら知らない。
 知りたい気持ちをぐっと抑制し続けてきた。
 聞き始めると根掘り葉掘りになりそうで。

5/29
◆ぼてじゅ〜
 大阪で泊まるホテルはネットで予約した。
 繁華街「ミナミ」の中にあり、1泊4800円。
 もとはラブホテルで、今でもその方面に利用可だ。
 表の看板に「3時間、1室4000円」とある。
 名前は「ル・ボテジュール」とおしゃれっぽいが
 Boteju Hotels に属し、本名は「ぼてじゅ〜ホテル」。

5/30
◆典座(てんぞ)の心
 5月は毎週のように出張した。
 いきおい自炊の回数が減った。
 逆に体重は少し増えているはずだ。
 いよいよ料理教室で学んだ技が活かされる。
 なにしろ「おいしく食べて1日1400 Kcal」が目標。
 典座(永平寺の懐石料理)を模範とする料理教室だからね。

5/31
◆"Kingdom of Heaven"
 夜間割引で映画を観る。
 お目当ての映画には5分差で間に合わず
 映画館の前でしばし迷って十字軍の歴史物を選ぶ。
 イェルサレム攻防の大決戦が山場である。
 このごろはCGのおかげで大群衆シーンも安いね。
 たいした感銘もなく、夜道を自転車で帰る。

過去の記事
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