2006年
 つぶやき

11/1
◆ビジネス・アイデア
 県内の学生を対象とするビジネスプランのコンテストで
 ゼミ生のひとりが優秀賞をもらった。
 快挙は快挙だが,教員としては複雑な気持ちである。
 事前に概要を示されたとき,「こりゃ通りっこないな」と思い
 ま,出すだけ出したら,という態度をとった。
 ところが,それが優秀賞なのである。
 審査員の感性をつかむためにも,この学生から学ばねばならない。

11/3
◆ Peter Bogdanovich
 マルクス兄弟の初期5作品は電器店の廉価 DVD コーナーで買った。
 同じ店でボグダノビッチ監督「What's up, Doc?」(1972)も見つける。
 邦題(「おかしなおかしな大追跡」)はバカっぽいが,これも買う。
 彼の前作「ラスト・ショー」(1971)にはぼくもすっかり感心し
 パリの古本屋で仏訳版の原作本を買ったほどだ。
 いや,そんなしょーもない自慢はともかく
 72年のこの喜劇映画も,DVD を買って損した感じがしない。
 スラップスティックというかスクリューボール・コメディーの
 お約束をきちんと踏まえて,なるほどとうなずかせる。
 DVD には監督自身による解説が副音声でつくので
 裏表で4時間たっぷり楽しめる。

11/4
◆はやとの風
 という名の列車でトロトロと人吉市に向かう。
 高校時代の同窓会に出るためである。
 同窓生 150人のうち 50人以上が集まる。
 東京など遠方から来る者が多いのに
 近くに住むぼくが行かないわけにはいかない。
 ていうか,このごろぼくはしばしば懐旧の念にかられ
 昔は無視していた同窓会にホイホイ出るまでになった。

11/5
◆楽ちゃり(JRの貸し自転車)
 人吉駅で電動自転車を借り,広くもない町内を走り回る。
 観光地図に示されたスポットはほぼ押さえた。
 タオルを持ち歩き,町の銭湯2軒に入る。
 本屋も探したが,それはもはや街中にはないらしい。
 こぢんまりとした町も悪くないと思いながら
 それにしてもやはり本屋はなくっちゃね。

11/6
◆宴の後
 大きな病院内のデイケア施設で同窓会は開かれた。
 院長も仲間ゆえ,そこだと夜遅くまで騒いでもOKなのだ。
 じっさい宴会は6時から12時まで続いた。
 深夜,ホテルへの道をゾロゾロと帰る。
 ホテルでは和室に4人,雑魚寝して話が続く。
 自分にとって意外にも,人のいびきが気に障らない。

11/7
◆燃費手帳
 雨が降りそうだったので車で学校に行く。
 途中,ガソリンスタンドに寄る。
 あれれ,手帳を見たら前回の給油は7月だ。
 [7月6日付の「つぶやき」にも書いている]
 4ヶ月で走行距離は 320 Km(消費量 18リッター)。
 小さい車でタンクの容量も 21リッターと小さいが
 めったに乗らないんで不便に感じることもない。

11/8
◆朦朧(モーロー)
 朝未明の5時に目が覚め,そのまま起床した。
 案の定,午前中の会議のとき睡魔に襲われる。
 もう夢かウツツか分からぬような状態で
 人の発言を聞き,自分も発言したくなったが
 いま頭に浮かんだことをそのまましゃべれば狂人だ。
 てなことを考えながら,ウトウトしていた。

11/9
◆宴の準備
 職場の親睦会の会長をしている。
 学内で小さな「飲み会」をなるべく頻繁に開きたいと思う。
 十年ほど前までは,よくやったものだが,最近はめったにない。
 同僚と大きく群れたり,バカ話するのを,忌避する傾向が強い。
 そこで,ぼくは「この指とまれ」方式で宴を企てた。
 集まりが嫌いな人を,いわば縁なき衆生と見定めると
 もはや人の集まりの悪さにイラだつこともない。
 こうして精神的にはすっきりしたが
 その代わり,酒肴の買い出しに一人で走り回ってる。

11/10
◆原点回帰
 この集合住宅で最初の冬を迎えようとしている。
 扇風機を押入に入れ,冬用の掛け布団を出す。
 鹿児島に来て以来,一軒家ばかり転々としてきたが
 いまの住宅は密閉度も高く,かつ狭い分だけ暖かそうだ。
 息苦しいほどの狭さはむしろ懐かしい。

11/11
◆昼食会
 新任教員を迎えて学科では形ばかりの歓迎会が開かれた。
 昼,お弁当をみんなで静かに食べただけ。
 田舎の小さな学校だけど,クールな雰囲気です。
 一方,ぼくが呼びかけた夜の小宴会はバカ話で盛り上がる。
 というか,バカ話をしたがる百姓だけが集まった。

11/12
◆学内の空気
 鹿児島国際大学を不当に懲戒解雇された3教授の
 原職復帰を求める訴訟は,地裁でも高裁でも勝った。
 報告集会に参加したが,そこに祝勝ムードはなかった。
 裁判に勝っても,じっさい元の教壇に立てるかどうかは
 経営側(理事会)の任意の裁量によるのだという。
 教授会はカリキュラム編成などで対抗しなければならない。
 しかし,解雇から5年,物言えば唇寒い空気がはびこる。
 何かしら意見をいう人は空気が読めない人。
 「まともな」議論は疲れをもたらすだけとされる。
 教員同士の親しい交わりもなくなった。
 あれれ,これはうちの学校の状態そのものじゃない。
 偉そうによその学校のこと,批判できないよ。

11/13
◆ブラウン管
 チューナー部が壊れて廃棄されていたテレビを使っている。
 ビデオデッキのチューナーを利用すれば放送も見られる。
 画面は15インチほどと小さいが不満はない。
 しかし,世の中は地上波デジタルの時代だ。
 近くの電器屋で,32インチの液晶テレビを安売りしていた。
 安売りったって 14万円ですけどね。
 でも,1年前に比べりゃ相当安い。
 本日限りの特価です,と呼びかけられ,心が動く。
 いつものように心が動いただけで,買わず。

11/14
◆カラープリント
 9月にバンドンでお世話になった家族へ手紙を出す。
 この種の Thank You Letter は帰国後すぐに出すべきだが
 インドネシア語の作文に手間取った。
 (結局は冒頭と末尾のみインドネシア語で,他は英語)
 同封する写真は自分のカラープリンターで印刷した。
 以前のプリンターに比べ画質の向上は著しいが
 それでもやや青みが強く,何度も調整した。
 大きい印画紙で写真を送りたかったので,ムダは承知の上。

11/15
◆風潮
 うちの夜間部を宣伝すべく県内の高校を訪問している。
 ぼくは同僚と二人で国分高校へ行った。
 この同僚はかつて県内の高校教師だったので
 昔の組合仲間が二人おり,夕方からは4人で飲む。
 話を聞けば,最近は高校教師の間でもタコツボ化が進む。
 職員室とかでの雑談にも乗らない者が多い。
 チームを組んで教育にあたる,とかの連帯感にも乏しい。
 なんだか,どこもかしこも,って感じだね。

11/16
◆カタカナ式英語発音
 うちの学校の文化祭は市の文化ホールで開かれた。
 夏に異文化研修した学生たちが国ごとに成果を報告する。
 ハワイに行った連中は「英語で」発表した。
 人数が多いので,一人ワンフレーズずつ話す。
 落語の「きゃいのう」みたいなもんだ。
 驚いたことに英語らしく発音できる学生は少数。
 ほとんどはカタカナを棒読みする感じであった。
 聞いている方もいたたまれない思いに駆られる。

11/17
◆ボケてポカ
 水曜と木曜に夜間の授業があり,科目は別だが教室は同じ。
 学園祭で水曜は休みだった。
 んで,ぼくは木曜に水曜の講義をしてしまった。
 受講生が妙な顔をしてるな,とは思いながら
 とうとう最後までやっちゃったよ。
 前回の提出レポートを学生に返すとき,ようやく気づく。

11/18
◆自転車屋
 クロスバイクのギヤ変速のケーブルがいかれた。
 変速はできないが,走れることは走れる。
 買った店で修理しようと,夕方,立ち寄った。
 国道沿いにある,けっこう大きな店だ。
 3人ほどの客がパンク修理などで並んでいる。
 修理をするのは店のジーサン二人。
 見ていると,この二人,手際はあまりよくない。
 ようやく順番がぼくにまわってきたが
 あ,これは今日はムリ,といわれる。
 明日うちの若いもんがやるんで置いていけ,だと。
 一瞬ためらい,自転車に乗って退散した。

11/19
◆小欲知足
 自宅にワインセラーをもつ「おしゃれな」友人がいる。
 こちとらは自慢じゃないがワインの味もわからん。
 まれに「高そうな」ワインを飲む機会もあるが
 いまだに安ワインとの違いがつかめない。
 自炊でミネストローネ(もどき)をつくり
 フランスパンと組み合わせれば安いワインだっておいしい。
 高くておいしいワインが存在するかもしれないが
 その奥深い世界に足を踏み入れる気になれない。

11/20
◆桜塚やっくん
 最近ちょっと人気がでてきたピン芸人である。
 うちの学園祭に来た。
 ここ数年,うちでもお笑い芸人で客寄せをしている。
 予算の関係で,「売れる前」の芸人を招いている。
 今回は契約後に人気が出,それはうれしいが
 会場(体育館)に客が殺到するのは困る。
 教職員も客誘導係として動員された。
 大混雑は発生せず,誘導係もお笑いを楽しむ。

11/21
◆暴食
 最近また体重が増えつつある。
 たしかにこのところカロリー摂取量が大きい。
 酒はあまり飲めないので,飲み過ぎってことはないが
 飲んべえたちが手をつけぬ皿をつぎつぎと……
 気がつけば,ふだんの夕食よりたくさん食べてる。

11/22
◆恬淡(てんたん)
 近所の銭湯「みょうばん温泉」の番台に貼り紙があった。
 「19日の夜,歌手の長渕剛さんがおいでになりました」んだと。
 それを読んで常連ぽいオヤジが番台のオバサンに
 「色紙は?」と尋ねていた。
 「そんなものは置いとらん」
 うむ,じつに好ましい姿勢である。
 有名人の色紙を色あせても貼り続ける店は悲しい。
 有名人が来ても,そしらぬふりをする店は潔い。
 この銭湯も後で貼り紙などしなきゃ,もっとよかったのに。

11/23
◆群馬
 群馬の「公的な」ローマ字表記は Gunma。
 もちろん,phonetically につづれば Gumma だが
 これは英語で「梅毒第三期のゴム腫」を意味するため
 観光業界からのクレームで Gunma になったという。
 群馬県立女子大もおかげで混乱気味だ。
 そこの紀要は表紙と裏表紙で大学名の英文表記が異なる。

11/24
◆カーネルパニック kernel panic
 パソコン用語である。
 OSに致命的なエラーが発生し、処理が停止すること。
 昔のマックの用語でいえば「爆弾」にあたる。
 うち(家族)のデスクトップPCがこれにやられた。
 上京し,さっそく「開腹」して修理に取り組む。
 そもそも「重症」なのだから成功の見込みはない。
 万が一をあてにして,あちこちいじくっただけ。

11/25
◆拾い食い
 うちの犬は道に落ちているものを食べたりしない。
 と 思っていたが,さにあらず。
 夜の散歩の途中,いつのまにか変なものを口にくわえていた。
 骨付きのフライドチキンのようである。
 ダメっ,と叱ってもダメだった。
 逆に飼い主の手をかんじゃうぞ,という勢いだ。
 老犬のくせにというべきか,老いゆえのボケなのか,

11/26
◆エドワード・サイード
 2003年に没したパレスチナ出身の知識人である。
 彼の「意志と記憶をたどる」ドキュメンタリー映画を観た。
 佐藤真監督の作品「Out of Place」は25日が公開初日だった。
 朝刊の広告でそれを知り,JRで東中野まで出かける。
 期待したのに,編集の拙いご家庭ムービーって感じ。
 終了後には板垣雄三先生(中東研究の大家)の講演があった。
 この講演もコクがなく,ちょっとした自慢話が中心。

11/27
◆親バカ
 父親に似ず(母親に似て)息子は足が速い。
 んで,大学のラグビー部でもFB(フルバック)をつとめる。
 前橋市で関東地区対抗の決勝戦が開かれた。
 父親は電車を乗り継ぎ,いそいそと観に行く。
 ところが,その肝心の最終戦で息子の足がつる。
 後半は交代させられ,試合も1ゴール差で敗れた。
 息子が大泣きするのを見るのは赤ちゃんのとき以来だ。
 試合に負けたのは残念だけど
 挫折で得られる経験値は大きいぞ,きっと。

11/28
◆読書量
 米原万里(故人)は1日7冊読んだという。
 それには遠く及ばないが,ぼくもけっこう速読できる。
 ただし,中身はほとんど覚えていないタイプの速読だ。
 本のタイトルすら忘れるので2度買いしたりする。
 このごろ本を読むスピードがガクンと落ちた。
 いや,熟読玩味するようになったからではない。
 単なる老化現象である。
 鹿児島に帰る前にいつもは立ち寄る古本屋も素通り。

11/29
◆ Legacy(遺産)
 PC用語で「旧式になったけど捨てられないもの」の意。
 研究室のパソコンはまもなくリース期限が切れる。
 校費で機器が更新されるのはうれしいが
 これまでのソフトが使えなくなるのは困る。
 OS9時代のファイルが読めなくなる。
 リース切れのPCを私的に買い取る手もあるんだろうが
 それが「法外な」値段なら旧財産は捨てようかな。

11/30
◆寄贈本
 友人たちから彼らの著書が送られてくる。
 研究に励んできた人々はそれをきちんと形にする。
 心底敬服しながら,あせる。
 自分の研究にあせるのではなく,返事を書くのにあせる。
 寄贈が連続し,読むべき本がたまっちゃった。
 やっぱりちゃんと読んであげたいしな〜。

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