2007年
 つぶやき

11/1
◆シベリア俘虜記
 高杉一郎『極光のかげに』(岩波文庫)も名著だった。
 簡潔な文章を連ねて,重たい話を淡々と語る。
 ソビエト・ロシアの真実なんて,今じゃ「常識」みたいになってるが
 1950年の初版当時は,なかなか信じてもらえなかったろう。
 じっさい,高杉はソ連びいきの人々から激しく非難された。
 ぼくはたまたま世代が違うのでその騒ぎを知らないが
 仮に同世代だったら,中野重治などの尻馬に乗ったかもしれない。
 また,仮にぼくも俘虜仲間のひとりだったら
 高杉を陥れる「犬」の側だったかもしれない。
 などと想像しながら読み,心がヒリヒリとした。

11/2
◆夜の大阪
 学会初日の会場は西宮市の関西学院大学で
 懇親会にも出たら,宿(梅田)についたのは9時過ぎ。
 せっかくだから(何がせっかくなのかわからぬが)
 夜の繁華街へ「視察」におもむく。
 防弾チョッキみたいなのを着た警官4人組が
 人混みをかきわけて警邏(難しい字だね)している。
 人々が下品なまでに大声で話しているのも大阪だ。

11/3
◆大阪アジアン映画祭
 学会二日目は梅田(アプローズタワー)で国際シンポジウム。
 場所がいいせいか聴衆の入りも良い。
 5時終了後の懇親会はパスした。
 じつは心斎橋のそごう劇場で映画祭をやってるのだ。
 6時から日本映画「愛の予感」は舞台挨拶つき。
 主演も兼ねた監督と女優(映画出演もこの二人のみ)が出る。
 入場料1200円は安かったな。
 スイス・ロカルノ映画祭グランプリ受賞作。
 ぼくは楽しんだが,両隣のオバサンは寝ちゃった。

11/4
◆高野山
 学会三日目の会場は奈良県の高野山大学。
 学会の後,参加者の大半は宿坊に泊まる。
 フランス人が喜びそうなお宿でした。
 お寺に泊まる感じだが,支払いはカードでOK。
 ただし,団体値段でも一人8500円。
 ま,精進料理はどれもおいしかったし
 お風呂の湯もやわらかい質感で気持ちよし。

11/5
◆エクスカーション
 宿では早朝6時の勤行に参加できる「サービス」もあったが
 ぼくを含め,ほとんどの人が寝過ごしたみたい。
 朝食は7時で,8時から遠足。
 善男善女であふれる参道を歩いて奥の院へ向かう。

11/6
◆体重回復
 鹿児島に戻り,銭湯で「旅」の疲れをいやす。
 体重計に乗ったら 69キロだった。
 夏頃 66キロ台に落ち,ちょっと心配になり
 しばらく,がんばって「暴食」に励んだ。
 その結果があらわれてうれしい。
 つまり,体重減は病的なものではなかったわけだ。
 ならば,ふたたび食を細めよう。

11/7
◆礼節
 ある会議で若い人の発言中,ぼくは舌打ちをしたらしい。
 舌打ちした覚えはないが,若い人から「失礼な」となじられた。
 このとき二重の意味で文化コードの違いを感じた。
 一つは,自分の方が正しいと信ずる根拠のズレ。
 もう一つは,年少者から礼儀を説教される違和感。

11/8
◆ Sociological Imagination
 学生に「考える楽しみ」を教えようとする。
 なるべくとんでもないこと,変なことを考える力
 そして,一見無関係な事象どうしを結びつける力
 これが社会学的想像力ってやつだぜ,と。
 ところが,ぼく自身がその正しい用法・用量をまちがえ
 いつのまにか「まともな考え方」ができなくなってる。
 何がまともで,何が変か,うまく識別できない。
 だから,ぼくがおもしろがることはたいてい変(らしい)。
 自分では「まともなこと」をしゃべってるつもりでも
 客観的には,酔っぱらいオヤジの妄言とかわらぬ(かも)。

11/9
◆火災警報機
 消防法の改正で,すべての住宅に設置が義務づけられた。
 朝9時すぎ,わが官舎にも業者がやってきた。
 設置場所は「寝室」と指定されているが
 ぼくの寝室は同じ団地のよそとは違うらしい。
 3Kの構成で,ふつうは居間に使われている部屋。
 業者は「へえ,ここで寝てんですか」という。
 余計なお世話だ。

11/10
◆色彩感覚
 駅ビルの広場にクリスマスツリーが設置された。
 今年は一段と毒々しい。
 熟年女性のセクシー下着という趣。
 画像は地元テレビ局KYTのサイトのものだが
 そこには「と〜ってもキレイ!!」のコメント。
 つまり,これが鹿児島センス。
 夏場の街路樹ライトアップの色づかいも
 港近くの食堂街ドルフィンポートの池の照明も
 ああ,どれもこれも品がない,とぼくは思う。

11/11
◆三池炭鉱
 熊谷博子監督のドキュメンタリー映画「三池」を観る。
 来年1月に鹿児島で上映会をやるので,その試写会。
 試写会のまえに話し合いをしたとき
 ぼくが「高校時代の友人は職制の息子が多かった」というと
 だれも「職制」(管理職)という言葉を知らない。
 よっぽど特殊な言葉(ジャーゴン)なんだろうか。
 ところが,この映画のなかでは,けっこう連発。
 ほらね,と暗闇の中で安堵する。

11/12
◆陸上小説
 佐藤多佳子『一瞬の風になれ』全3冊を読んだよ。
 うちの学校の図書館でのべつ貸し出し中だったから
 そんなにおもしろければ,と狙っていた。
 たまたま返却されたのを見かけ,即座に借りる。
 んで,読了もしたが,味わいはいまいちかな。
 少年小説なら,あさのあつこ『バッテリー』の方が
 物語性の点ではるかに上等だし
 陸上小説なら,川島誠『800』にインパクトで負ける。

11/13
◆霧の中
 会話のなかでスペインが話題になった。
 そうそう,ぼくも行ったことがあるよ
 と言いかけて,口ごもった。
 あれ? スペインに行ったの,いつだっけ?
 80年代の終わりだったような気もする。
 バルセロナの街をひとりでさまよった思い出と
 フランス人といっしょだった思い出がある。
 て〜ことは2回行ったってことか?
 あれれ〜,すっかりボケちゃったよ。

11/14
◆銭湯風景
 女湯から「お父さ〜ん,いつ上がるの〜?」の声。
 「45分に」と,ぼくの隣のオヤジが応える。
 「は〜ぁ?」
 「よんじゅう,ご,ふ〜ん!」
 こういう壁ごしの会話,久しぶりに聞いた。
 昔は,こういう光景が日常的だった。
 自慢じゃないが,ぼくは生まれてずっと
 内湯(自宅の風呂)知らずの銭湯通い。
 要するに,生まれてからずっと貧乏。
 だから,こういう庶民っぽい光景に余計シミジミとする。

11/15
◆高杉一郎
 前に『極光のかげに』(1950)を読んでしびれたので
 ひきつづいて『征きて還りし兵の記憶』(1996)を読む。
 ところが,これは文体がガラリと変わり
 センテンスが長く,くだくだしく,読みづらい。
 学者(静岡大教授)になっちゃったせいだろうか。
 んで,ちょっと調べてみたら
 かれは児童文学『トムは真夜中の庭で』の翻訳者じゃん。
 う〜む,あれも名著だったなあ。

11/16
◆年の功
 学会の年報用にフランス人の論文6本を翻訳している。
 例の「フランス現代思想」の弊風をこうむり
 変に気取って,わかりにくい論文もある。
 ぼくがもっと若ければ,理解できない自分を責めたろう。
 しかし,いまでは「バカヤロー」と毒づくことができる。
 あ,もちろん声には出しませんけどね。

11/17
◆PC歴
 思えば1991年以来,マッキントッシュ一筋だ。
 いや,その前,80年代半ばは
 富士通の FM-7 で Basic の「勉強」をしとりました。
 (FM-7 も CPUがモトローラ社だから,反Intel歴は長い)
 ま,ともかく生来の「新しもの」好きゆえ
 Mac OS も改版ごとに即購入・即使用してきた。
 しかし,最新版の OSX 10.5 Leopard は
 購入はしたものの,まだインストールせず。
 やりかけの仕事が一段落してから,と考えている。
 そういうふうに「悠長に」構えられるあたりが老境。

11/18
◆脳梗塞
 サッカーのイビチャ・オシム監督が倒れた。
 他人ごとではない。
 うちも父・祖父がこれにやられた。
 ぼくも父が倒れた年回りにさしかかった。
 しかしな〜,これって用心のしようがないんだ。
 まめに健康管理していた人でも突然やられる。
 すぐに発見してもらえればいいが
 一人暮らしをしていると,これもムリ。
 漂泊の人という美意識とともに生きていくしかない。

11/19
◆サルサ
 同僚のひとりが鹿児島キューバクラブを主宰している。
 かれの誘いでキューバ音楽を聴きに行く。
 夜7時からバンドの演奏が始まる予定だった。
 しかし,そのバンドの鹿児島入りが遅れたとかで
 演奏開始は10時からになった。
 その間,客はひたすらフロアで踊る。
 催し名は「鹿児島サルサフェスティバル」だからね。
 ステップを知らないぼくはイスに座って眺める。
 ドカドカという超低音と大音響のなかで
 いつのまにかうたた寝をしてしまった。

11/20
◆内湯
 この官舎(集合住宅)にも小さいながら風呂がある。
 前に住んでいた官舎(一軒家)と違って
 風呂釜が室内なので,ガス中毒が怖い。
 それでも体を温めてから寝ようと,深夜,風呂をたく。
 適温に達するまで30分以上かかる。
 睡魔と闘いつつ,たきあがりを待つ。
 やめりゃーよかった,と思ったが,もう遅い。

11/21
◆ひまなし
 朝1個,昼から3個,学内で会議が続く。
 田舎の短大にも「大学改革」の波が押し寄せて……
 ふと気づけばすでに外は暗い。
 昼食も夕食もスーパーの弁当ですませた。
 そして,いまから夜の授業です。

11/22
◆火災訓練
 毎年この時期,うちの学校でも行われる。
 昼間部の学生は屋外で実物の消火器を使う。
 夜間部の場合は体育館でビデオ鑑賞のみ。
 ところがこのビデオは20年ぐらい前のものだ。
 (消防署もお役所だからお金がないのだろう)
 昔の俳優,昔の服装,昔の化粧法が切ない。

11/23
◆3連休
 上京の飛行機は,羽田空港で Go-around。
 先に着陸する飛行機が鳥を吸い込んだため
 その滑走路は一時閉鎖された。
 機内のモニターには滑走路が見えていたのでがっかり。
 強い気流のなかをまた上昇する。
 大揺れして不愉快な時間が長く続く。
 夕食時に帰宅したが,家には誰もいない。
 しかたなく,自分で米をとぎ,夕食の準備。

11/24
◆ノートPC死亡?
 3年間愛用してきた iBook G4 が起動しない。
 上京中もこれで仕事する予定がパーだ。
 いや,鹿児島に帰っても問題は変わらぬ。
 常時携帯し,どこでも開いて楽しんできた。
 新しいのを買わねばならぬが
 セッティングのし直しなどがメンドい。

 [以上,奥さんのデスクトップPCで入力]


11/25
◆ Over-Booking
 奥さんと前橋までラグビーの試合を見に行くので
 ついでに近くの伊香保温泉に泊まろうと企てた。
 ネット検索すると,土曜の夜はどの宿も満杯。
 それでも1部屋空きを発見し,即予約した。
 おしゃれなプチホテルである。
 ところが,宿についたら空き部屋はないという。
 代わりに,同系列の大型旅館の小部屋二つをあてがわれる。
 (こうして奥さんとは離ればなれに)
 和式の旅館なのに,ビジネスホテルっぽい部屋だ。
 団体客の酔漢を隔離するためのつくりなのか。
 じっさい,オヤジたちが廊下でさわぐ。

11/26
◆水沢うどん
 讃岐、稲庭と並ぶ日本3大うどんの一つだという。
 ガイドブックに載っている店の前には
 ものすごい人だかり。(入店待ちの客だ)
 話のタネにと,並んで店に入った。
 売りは腰の強さらしいが,富士吉田うどんには負けるね。
 味はまあ普通だから、1人前1100円は高い。
 讃岐うどんと違って,地元民は寄りつかぬ感じ。

11/27
◆ファイル蘇生せず
 鹿児島に戻っても,むなしくノートPCの蘇生を試みる。
 蘇生ソフト「Data Rescue」ってのが効きそうだが
 1万数千円を投じる価値があるかどうか,悩む。
 ノートPCの中に,是非とも回収すべきデータがあるのか?
 基本的なデータはデスクトップにも保存してある。
 ノートPCにしか入ってないデータは
 スケジュール表とぼくが送信したメールのほとんど全て(今年の8月以前)。
 デスクトップではメールソフトの設定ミスで送信文を全消去したのだ。
 スケジュールや過去の送信文が読めないことに一瞬あせった。
 だけど,よく考えると,人生の大問題ってものでもない。
 1993年の大洪水で昔の手紙などが消失したことに比べれば……。

11/28
◆退屈
 昼,外食のついでに本屋に立ち寄る。
 小谷野敦『退屈論』(河出文庫)を買う。
 小才と嫌味のきいた書きっぷりが好きです。
 退屈ってのは良いテーマだな,と思う。
 昔,スペインの田舎町で2週間ほど過ごしたとき
 そこでバカンスを楽しむイギリス人たちに感心したな。
 連中はそこの海岸で一日中ぼーっと過ごす。
 あの退屈さをガマンできるのはひとつの力量だ。
 イギリスのミステリーを読んでても
 大金をせしめた犯人はどこかの海岸でのんびり暮らす。
 これが人生の「成功」のイメージか。
 ならば,ぼくはすでに「成功」している。
 あとは退屈とどう上手く折り合うか,だね。

11/29
◆私語
 2部の授業のあと,社会人学生から要望が出た。
 授業中の私語をやめさせろ,というのである。
 この種のリクエストは前にもたびたび受けていた。
 が,学生に「静かにしろ」と命じたことはない。
 もちろん迷惑行為はやめさせるのが正しい態度だろう。
 それができないぼくに問題がある。
 それは自分の授業に(昔から一貫して)自信がないからだ。
 私語は,ぼくの話のつまらなさに原因があると思う。
 自分自身の子ども時代を思い出しても
 つまらない話をする大人にかぎって「静かにしろ」という。
 そういう大人を鼻で笑っていたぼくだ。
 とても同じセリフは恥ずかしくて吐けない。

11/30
◆ Mac Book
 ネット注文で Apple Store から購入した。
 CPU は2.2 GHz,メモリーは 1 GB,値段は 14万円だ。
 OS は 10.5 Leopard が実装済みである。
 これまで使ってきた iBook のデータを蘇生するための
 ソフト Data Rescue 2 も注文したが,これはまだ届かぬ。
 戸外でのデータ通信用の部品(Fujitsu AH-F401U)も
 この MacBook では使えないため,別のを買わねばならぬ。
 う〜む,いろいろ物入りである。
 種々のソフトのインストールにも時間がかかる。

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