2009年
 つぶやき

4/1
◆研究三昧
 前の学長(堀田満先生)が南方熊楠賞を受賞した。
 植物学者で,県内の絶滅危惧種の保護にも力を注いだ人。
 退職前から西南日本植物情報研究所を開いている。
 所員は本人のみだから道楽みたいなもの(と思われた)。
 もちろん,今回,世間的に評価されたのはめでたいが
 一人で勝手におもしろがってる姿にも味がある。

4/2
◆亀の子スタイル
 この時期,この家で暖房器具はコタツだけ。
 なんだか寒いので,コタツにもぐりこみ,首だけ出す。
 ほとんど終日この形で過ごす。
 家には誰もおらず,「咳をしても ひとり」(尾崎放哉)

4/3
◆『オシムの言葉』
 評判の良い本が文庫になったので買う。
 ユーゴ内戦のことなど,泣かせどころも多い。
 半分読んで,奥さんに「良い本だ」といったら
 奥さんはその本を職場に持って行ってしまった。

4/4
◆クリシェ
 もうすぐ学校で,ふたたび基礎演習を担当する。
 これは学科の全教員が担当し,理念や方法も共有され……
 という段取りだが,最近ちょっと違和感を覚える。
 ぼくは「発想力を鍛える」のも演習の目的と考え
 なるべく「変なことを考える」訓練をしてきた。
 ところが,よそでは「普通のことをきちんと」考えさせている。
 環境その他の社会問題を「正しく」認識させる教育だ。
 しつらえられた「正解」への到達を励まされる。
 それってつまらんだろう,と思うのはぼくだけらしい。
 じっさい,ぼくは学生からも嫌われている。
 後期のゼミ選択で,斉藤ゼミを選ぶ者がいない。
 それが3年続いているので,問題はぼくの方にある。

4/5
◆ iBook
 娘のノートPCが不調らしい。
 2002年のものだから,まあ,しかたないか。
 iBookも G3から G4へ,さらに MacBookへと進化した。
 買い換えればいいのに,と思うが
 口を出すと,じゃあ買って!と,ねだられそう。
 だから,黙って見ている。

4/6
◆バリケード
 ネット上でフラフラさまよっていたら
 YouTubeでいろいろ懐かしい歌に出会う。
 驚いたのは「ワルシャワ労働歌」。
 なんだかとてもポップな感じで歌われている。
 スペイン経由で名前も「A Las Barricadas」と変わり
 もっぱらアナキストの歌になったせいだ。
 それはそれでいい感じですけどね。

4/7
◆積ん読
 10年以上前に買ったまま放置しておいた本を
 鹿児島に戻る道々,読もうと企てた。
 素材はルカーチ研究だから,哲学書だけど
 講義録の形の「語りおろし」なので読みやすそうに見えた。
 しかし,ちゃんと読むとやっぱり難解。
 頁をめくり終えて読了したことにする。
 中身で覚えているのは,ルカーチの女性関係の部分のみ。

4/8
◆湯加減
 近所の銭湯に行けば,なぜかお湯がめちゃ熱い。
 ゆったり体を浸したいのに,それもかなわぬ。
 他の客たちは浴槽の外でプロ野球談義にふける。
 そういう時間の過ごし方がうらやましい。
 こっちは洗い場の鏡で自分の顔を眺めるばかり。

4/9
◆針仕事
 入学式に着た背広のボタンがとれそうだ。
 帰宅して裁縫箱を探す。
 この背広,自分の持ち物のなかでは上等の方だから
 ボタンつけも素人仕事じゃ まずいかもしれん。
 さりとてプロにお願いするほどのものでもない。

4/10
◆がんばろう
 大牟田の炭鉱労働者,荒木栄が作曲した歌だ。
 大牟田といえば,与論島が連想される。
 与論出身者に対する差別のひどさは有名である。
 いまは与論の音楽グループ「かりゆしバンド」が
 独特の節回しで「がんばろう」を唄う。
 ちょっと泣けてくる。

4/11
◆新参
 団地(県職員住宅)の新入居者が手土産を配りに来た。
 一人は,布巾とスポンジをきれいにラッピングしたもの。
 3百円程度の安物だが,そうは見えず,ちょっと感心した。
 もう一人は,乾麺の一束で「引越蕎麦」の代わり。
 この人は若い女性で,付き添う夫は西洋系の外国人。
 こんな団地には不似合いなカップルだった。
 このごろの県職員は,なんか文化のグレードが高いぞ。

4/12
◆青線
 50年前まで,警察が売春を公認していた地域を赤線という。
 一方,表向き飲食店で,じつは売春している地域を青線という。
 青線地帯は2階の軒が低いなど,外観に特徴がある。
 鹿児島は,全国的にも珍しく,そういう建物が残っている。
 市役所前の「名山堀」と呼ばれる一画だ。
 全体がりっぱな文化遺産だ。(誰もアピールしないけど)
 いまも多くが飲み屋をやっているから中に入れる。
 2階に上れば,ますます「情緒」に浸れるぞ。

4/13
◆塩加減
 若者の客が多い飲み屋に入る。
 2500円で飲み放題ですからね。
 値段の安さは良いが,味の塩辛さがつらい。

4/14
◆俳句
 萩原朔太郎の俳論『与謝蕪村』(岩波文庫)は
 俳句もその本質は「叙情詩」であると断じ
 蕪村こそ真の抒情詩人であると称揚する。
 う〜む,なるほどな〜,と感心した。
 まだやったことないけど,俳句実作への興味も湧く。
 いよいよ老人クラブへの道を歩んでいる。

4/15
◆発声法を知らず
 授業が一日3コマって日がある。
 しゃべりっぱなしで,のどの調子が変になる。
 学期が始まったばかりなので,こっちのテンションも高い。
 いつまでたっても老熟の境地に入れぬ。

4/16
◆親身の指導
 「何かあったら相談に来なさい」という教員がいる。
 偉いなあ,と思う。
 ぼくには決して言えない言葉だ。
 いや,そもそも人から相談されたことがない。
 相談し甲斐のある人間かどうか,人はよく見ている。

4/17
◆粉末コーヒー
 緑茶の葉を買うようになり,コーヒー豆は買わなくなった。
 家で,むしょーにコーヒーが飲みたくなり
 コンビニに走って,インスタントを買う。
 これ,案外おいしいぞ。
 粉はお湯によく溶け,技術の進歩をうかがわせる。

4/18
◆立食パーティー
 夜間部の新入生歓迎会に出る。
 昔と違ってアルコール類はなく
 卓上にはもっぱらおにぎりやお稲荷が並ぶ。
 乾杯の合図のあとは,ひたすら食うのみ。
 という姿を,学生にじっと見られていた。
 「先生,よく食べますね」の一言で我に返る。

4/19
◆科学の子
 反原発の映画上映会を手伝う。
 映画サークル仲間のつきあいである。
 たしかに原発に反対する気持ちはわかる。
 賛成派は金に転んで,見苦しいとも思う。
 しかし,ぼくは鉄腕アトムとともに育ってきたので
 原子力の平和利用という思想にも親和する。
 反原発を叫ぶ人々ほど,一途にはなれない。

4/20
◆らせん状スロープ
 行ったことないけどNYのグッゲンハイム美術館は
 なかなかすてきな建物だと聞く。
 映画「ザ・バンク」(原題 The International)は
 その館内での派手な銃撃シーンで評判だ。
 観れば,鹿児島市のメルヘン館に似ているので驚く。
 メルヘン館は鹿児島の文化水準の低さを象徴する建物だが
 設計も有名建築のパクリだったのね。
 もちろん規模も質もかなり劣化したコピー。

4/21
◆怨霊退散
 生き霊に取り憑かれて苦しんでる人がいる。
 そんな話,すんごい久しぶりに聞いたなあ。
 ガキの頃,近所のオヤジが語った怪談を思い出す。
 今でも生き霊とかを信じている人がいるので驚く。
 その人,けっこう「インテリ」だから,なおさらだ。
 ちなみに,生き霊は元ラグビー選手で,やたらパワフルなんだと(笑)

4/22
◆一筋
 小林信彦『おかしな男 渥美清』(新潮文庫)の中の
 本筋とは関係ないフレーズに心を動かされた。
 日本人は,非常に狭い範囲内で
 一つの小さな穴を掘り続ける人を高く評価する……
 この言葉は,小林秀雄についての評らしいが,出所不明。
 したがって,ぼくにとっては又聞きの又聞きだが
 ちょっと唸りたい気持ちになりました。

4/23
◆単調
 山奥の看護学校での非常勤講師,今年は無し。
 誰も聴いてくれない授業で,毎週つらかったが
 行ったついでに温泉巡りができるのは良かったな。
 この4月から,そうした遠出をする機会がない。
 つまり,がらりと気分を変える場面がない。

4/24
◆風の便り
 幼稚園から中学まで一緒だった男が死んだ。
 車に撥ねられたんだそうだ。
 小学校時代は「お誕生会」仲間だった。
 中学以降はほとんど付き合いがないから
 思い出に残るのはガキの時代の顔のみ。
 昔の田舎のあれやこれやを,いっぺんに思い出す。

4/25
◆エロ話
 開高健『人とこの世界』(ちくま文庫)では
 高名な文化人同士の「くだけた」対話が読める。
 一言でいえば猥談だ。
 ただし,それなりに奥行きがあり,味わいもある。
 ところで,ぼくは最近その手の話をしてないな。
 笑いあえる仲間がいないせいですね。

4/26
◆ギョッ
 テレビに「膣カンジダ」という字が大きく出た。
 製薬会社のCMである。
 文字だけで興奮して,我ながら恥ずかしい。
 調べてみたら,このCMは1年前から評判だ。
 一文字だけで注目させるのは効率が良い。
 と言いながら,商品名は覚えていない。

4/27
◆身を委ねる
 ときどき開店するバーサン床屋に行く。
 ここは終始無言でコトが済むので良い。
 まずドアを開ければ鈴が鳴り,バーサンが出てくる。
 イスに座れば,ぼくはたちまち眠っちゃう。
 目を開ければ,仕事は終わってる。
 千円札2枚を差し出して店を出る。

4/28
◆実盛
 小学5年のとき,担任の先生からアダナをつけられた。
 サイトー・ベットー・サネモリ。
 小学生には意味不明ゆえ,クラスの誰も使わず。
 ぼく自身にも,ただ音だけが記憶に残る。
 長じて,斉藤別当実盛のことだと知るが
 特段の感慨もわかず,知識はそのまま放置した。
 この明け方,突然その名前が頭に浮かぶ。
 調べてみると,戦前は木曾義仲がらみで有名な人物だった。
 歌舞伎に「実盛物語」,謡曲に「実盛」がある。
 いまではその名を知るだけでもかなりの教養人だね。

4/29
◆レイト・レイトショー
 休日前夜,映画館では11時過ぎの回もある。
 案外,客も多いので驚いた。
 さらに驚いたのは帰りのエレベーター。
 男女が激しく抱擁しあっている。
 ぼくを含め3人だけの空間だから,邪魔者はぼくでした。

4/30
◆魚料理
 昼,街なかに出て,定食屋に入る。
 魚のアラ煮定食を注文した。
 魚なんてガキのころは好んで食べなかったな。
 それに対し,父は魚の骨をよけて上手に食べ
 しかも,最後は茶をかけ「骨湯」にして飲んだな。
 と,思わず父を偲んだりしました。

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