2009年
 つぶやき

5/1
◆小話
 それがけっこう気に入ってるネタなのは確かだが
 講義中に何度もしゃべってるとは知らなかった。
 受講生の一人(2年生)が「それは去年も聞きました」という。
 だから今度で3回目,だと。
 学期の初めに,「つかみ」のつもりでしゃべる小話。

5/2
◆腕をふるう
 上京して家族宅に帰ると夕食作りが期待されている。
 あわててネットでレシピを調べ,材料買いに走る。
 期待されているうちが華との思いがあるからだ。

5/3
◆役立たず
 奥さんの勤務先(中学校)に行く。
 校内LANでプリンターを使えるようにして,と
 奥さんから頼まれ,同行したのだ。
 休日なのに,職員室にはけっこう人がいる。
 書類つくりなどの諸雑務があるらしい。
 中学校の教員ってのは大変だね。
 あ,プリンターは,あれこれ手を尽くし,やはり使えぬまま。

5/4
◆ミステリー文庫
 読みたいと思いながら,すでに絶版になった本がある。
 2002年の本だから,文庫ってのは消えるのが早いね。
 鹿児島市内の図書館(大学図書館を含む)にはない。
 県内では,わずかに日置市立図書館にあるのみ。
 しかし,取り寄せて読むほどの本でもないしなあ。
 国立市立図書館は,この手の文庫本に強い。
 さっそく借りて,半日で上下2巻を読んじゃいました。
 ちなみに,それはハーラン・コーベン『唇を閉ざせ』です。

5/5
◆パレスチナ
 イスラエル兵士たちが占領地での加害行為を証言する。
 そのドキュメンタリー映画「沈黙を破る」を観に行った。
 東中野ポレポレはそれらしい雰囲気の,小さい劇場だ。
 地味な映画でも,けっこうたくさん客が来てる。
 さすが東京だね。

5/6
◆ヤン・フス
 佐藤優はいまや思想家。宗教改革の歴史も論じる。
 読んでて勉強になります。
 ヤン・フスは15世紀チェコの思想家で,焚刑に処せられた。
 フス派の人々はカトリック教会と戦うなかで
 言語と信仰を同じくする人々=国民という発想を導く。
 近代的民族や国民国家の源泉はフス派にある……
 なんて叙述で自分の過去が思い出され,心がざわつく。
 大学院の入試でフスを論ぜよとの問いに泣いた。
 自分の無教養に泣いたのである。
 当時の大学院膨張政策のおかげで合格はしたが……。

5/7
◆ダニ
 白い MacBook の上を赤い小さな虫が動く。
 ヒエ〜ッと驚いて調べると,これはタカラダニ。
 別に悪さはしないらしいが,気持ちは悪い。

5/8
◆宮台節
 東京駅構内の本屋は朝から人であふれる。
 鹿児島に戻る道中で読むための本を買った。
 宮台真司『日本の難点』(幻冬舎新書)は
 あいかわらずの曲芸的な技を披露する。
 相対主義でおもしろがりを追求してきた宮台が
 普遍主義をあえて選択してみせるのがツボだ。
 家族愛を臆面もなく吐露するあたりは ゆるい。

5/9
◆『超訳・資本論』
 著者の的場昭弘さんはいちおう知り合いだ。
 彼の最近の本は,どこの書店でも山積み。
 つまり,すっかり著名人である。
 彼が大衆啓蒙的な本を書き始めたころは
 ご祝儀のつもりで買ったが,もうそんな配慮は不要みたい。

5/10
◆デパ地下
 鹿児島の老舗デパート山形屋の地下に行く。
 コロッケ2種,ピーマンの肉詰めを買ったが
 食べると,どれもおいしくない。
 食材の良さを活かせぬ鹿児島クオリティ(涙目)

5/11
◆「荒野の決闘」
 誘われて,西部劇大好きオジサン宅に同行する。
 レーザーディスクのコレクションを拝見する。
 20年前まで喫茶店をやってたとかで
 得意の「みつまめ」をふるまっていただいた。
 他の面々は「この味,この味」と懐かしがる。
 オジサンも,次回は「OK牧場の決闘」を観ましょう,と上機嫌。

5/12
◆忌野清志郎
 テレビで追悼番組が続く。
 ぼくの知るキヨシローは売れない頃のキヨシロー。
 一度「ぼくの好きな先生」で売れたが
 その後,不遇の時をすごしていた。
 1970年代の中頃,国立の街をうろついていた。
 ぼくの裏のアパートに彼女がいたからだ。
 隣室にはぼくの友人がいたので,まあ,顔見知り。
 道端であえば挨拶ぐらいはしたよ。(えへん)

5/13
◆ Lover's Lane
 このごろは,ものに感動しても,語る相手がいない。
 それで再び懐旧モードに入る。
 大学2年のころ,ある本を読んで感動した。
 話を聞いてくれそうな女友だちを呼び出す。
 恋人とかじゃなく,サークル仲間で,頭のいい人。
 津田塾大の近く,玉川上水ぞいの道で
 5月の新緑の下,ぼくはひたすらしゃべりまくる。
 彼女とは,卒業後はまったく交流なし。
 最近ようやく知ったが,彼女は脳卒中で倒れ
 いまは札幌に戻って,リハビリ中。
 キーボードが打てるまでに回復し,翻訳を続けている。

5/14
◆いらだち
 人を思いきり罵りたいが,できない。
 長老(高齢者)になったせいである。
 罵れば,どうしても上から頭ごなしの形になる。
 その姿はどうも美しくない,と思うのが一つ。
 もう一つは,打撃的に罵る自信があるから
 その効き目が強すぎるのを自ら恐れてしまう。
 だもんで,けっこうセーブしてるのよ。

5/15
◆街角の言葉
 日替わりで,短文のメッセージのようなものを
 自分の店の前に貼り出す人がいる。
 通りかかって,ときどき感心する。
 その一つ。
 「後では言えなくなるかもしれないから
  いま言っておくね『ありがとう』」
 そう,ぼくも言いそびれてそのままだ。
 言わずに疎遠になった,あの人,この人。

5/16
◆距離感
 うかうかしてると学校の存続も危うい,と
 本気で心配している人がいる。
 ぼくはそれを少し遠目で見ている。
 だから,戦線離脱と叱られた。

5/17
◆若世帯
 この狭い官舎に住むのは若い夫婦ばかりだ。
 子どもも,赤ちゃんか就学前の児童ばかりだね。
 集団清掃の日,ぼくの傍らで親子が草をむしる。
 子どもは少ない語彙で一生懸命しゃべってる。
 ぼくは聞いてて,泣いちゃいそうになる。

5/18
◆小言幸兵衛
 数年前に退職した教員を囲んでの飲み会。
 彼が一人で研究を続けているのは立派だが
 大人しく心静かに暮らせない性格もそのままだ。
 世の中に対する不平不満がいっそう募っている。
 隠退生活のデザインってのも難しいね。

5/19
◆悶々
 夜中の3時頃,足の裏が「つって」目が覚めた。
 子どものころから,そういうことはままある。
 起きて,そこらを少し歩けば治る。
 が,4時頃また「つった」。
 電気もつけず,暗がりの中,よたよた歩く。

5/20
◆夜の授業
 10人強の学生が,広い教室に分散して座る。
 教壇でしゃべると,一人さびしい感じがするので
 教壇を降り,学生数人の近くでしゃべる。
 と,反対側の学生たちは眠ってる。
 そちらに移動すれば,今度はさっきの学生たちが眠る。

5/21
◆ぐやぐや
 また夜半に浮かんだ言葉。
 虞や虞や若(なんじ)を奈何(いかん)せん。
 高校時代,漢文教師が大声で吟じた。
 カイザー髭が自慢の大石亀次郎先生。
 毎日,髭の先を卵の白身で尖らせていた。

5/22
◆人間関係
 出入り自由だからこそ楽しいサークル活動だが
 突然やめると言う人が出ると,やはり困惑する。
 ま,それで内部にイヤな空気が生じるのも
 やめると宣告した人の狙いではあるが。

5/23
◆因果は巡る
 燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや,なんて
 せいぜい自分で魂を慰撫するしかない。
 若輩の幼い発言を「上から」諭しても
 相手は長幼の序もわきまえないから虚しい。
 ま,ぼくの昔の姿もそれに近かったかもしれんが。

5/24
◆焼き芋
 個人的にはホクホクしたのが好きだが
 鹿児島県民はベチャベチャしたのが好きみたい。
 かつて「にんじん芋」と称されたベチャベチャ系が
 最近は改良され「安納芋」の名で売られる。
 なるほど糖度が高く
 東京では1本千円で売られてるとの噂。
 その噂を信じれば,100g=74円はメチャ安い。
 鹿児島の山形屋百貨店前の芋屋は立派だ。

5/25
◆薫風
 自転車でうろつくのは楽しい。
 健康を損ねた人の話を聞いた後だから
 余計そのありがたみを覚えつつ走る。
 高校生みたいに,併走者とバカを言いながら
 なんて形だったら,もっと楽しかろう。

5/26
◆ Google Map
 Street View という機能で,パリの裏通りを眺める。
 1990年から1年間暮らしたところだが
 ほとんど覚えていない。
 景観が激変したわけでもないから自分の問題だ。
 朝夕ほとんどソソクサと行き帰りした道で
 犬の糞には気をつけたが,建物は見上げたこともない。
 そもそもぼくにとってパリは懐かしい街でもない。

5/27
◆手書き文字
 キーボードばかりで,字はめったに書かない
 今年は年賀状も書かなかった。
 だから最近は,字を3行以上書いたことがない。
 字を書くと,ひどく汚いので,愕然とする。
 味のある字,なんて言われた時代も今は昔。

5/28
◆逆張り
 まちづくりに興味があるという卒業生に会う。
 何か良いアイデアはないか,と問われたので
 持論=「人を寄せ付けないまちづくり」を語る。
 来街者を増やす企ては,たいていありきたりだ。
 成功事例集を読むのは楽しいが,模倣はつまらん。
 絶対よそがやってなさそうなことをしたい。
 それは衰退の促進,交流の拒絶だ。
 ぼくの予感によれば,新鎖国政策にこそ光明がある。
 ただし,これに肯いてくれる関係者はゼロ。
 ぼくが会った卒業生もやはり首を傾げた。

5/29
◆音読
 枕頭に積み上げた文庫本の山が崩れる。
 積み直すついでに読みさしの本を引き抜く。
 正岡子規『飯待つ間』所収の「従軍紀事」は
 新聞記者として日清戦争に従軍したルポだが
 終始,食事と宿についてのグチばかり。
 ただ,文章は流麗だから声に出して読みたくなる。

5/30
◆デパート斜陽
 夕方,JR立川駅は人であふれる。
 ところが駅前の伊勢丹百貨店はガラガラだ。
 鹿児島の山形屋より人影が少ないので驚く。

5/31
◆和製英語
 若手研究者が書いた論文の「評価」を頼まれる。
 冒頭の英文サマリーを読んで力が抜けた。
 liberalist なんて文字がある。
 自由主義者の意なら liberals(仏語 liberaux)と書かなきゃ。
 これは昔ぼくの指導教官が言ってた文句。
 あの水田洋でさえ間違うんだからな,と続く。
 てな具合に,先生たちあれこれの思い出も同時にわく。

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