2009年
 つぶやき

12/1
◆紙類
 段ボールからチラシまで,けっこうなゴミがたまってる。
 平らにして重ねてヒモで縛る――その作業がめんどい。
 だもんで,放っておいたらゴミの山。
 本日回収日と気づいて,えいっ,と片付ける。
 おお,部屋の畳が見えるようになりました。

12/2
◆花田清輝(1909-74)
 ぼくの若い頃はまだかなり有名な人だった。
 ただ,ぼくは彼の批評の芸がよくわからなかった。
 先日,書店で『花田清輝評論集』(岩波文庫,1993)を見かけた。
 すでに持ってる本のような気がしたが,読んでみる。
 と,まったく覚えのない文章が並ぶ。
 買ってじっくり読む――が,昔同様やはりイマイチ。
 レトリックの達人と評される花田の文章も
 ぼくには「ゆるく」感じられ,その滋味がわからぬまま。

12/3
◆かさぶた
 鼻のポリープを切除して1週間がたつ。
 鼻の通りがよくなったのは最初の一日のみ。
 二日目以後は,ときどき鼻がつまる。
 取り残したポリープのせいかと思い,病院に行った。
 先生いわく「それは《つ》のせいでしょう」
 《つ》とは,血(ち)の変化形。
 かさぶたを意味する方言だ。
 福岡県でも使うけど,鹿児島県でも言うのね。
 久しぶりに耳にし,ちょっとうれしい。

12/4
◆逃げ足
 前に読んだ人生訓話本『ラクをしないと成果は出ない』で
 日垣隆が「つまらないことはするな」とか言ってたな。
 つまんないと思ったら,さっさと撤退すべし。
 人生はそう長くないから,だそうだ。

12/5
◆見張り
 入試業務では監督が一番つらい。
 1時間半,ただそこにいるだけの仕事だが
 居眠りも「内職」も許されない。
 交響曲を反芻するとか,俳句その他の詩作とか
 自分の脳内でできる技を持ってればよかった。

12/6
◆眼(がん)を付ける
 敵意をもったまなざし。
 こっちには身に覚えがないが
 あっちにはそれなりの理由があるのだろう。
 一説によると,ぼくにバカにされたと思っているらしい。
 人を小馬鹿にしたような言い方,って
 ぼくにすれば,フレンドリーなアプローチなんですがね。

12/7
◆こむら返り
 5年おきぐらいの感じで再発する。
 ぼくの場合,深夜,寝てる間に,ってのが通例だから
 筋肉痛というより神経痛なのかもしれない。
 痛みは 30分ほどで治まる――これも通例だが
 とても寝ていられず,泣きながら歩き回る。

12/8
◆清掃当番
 今週は,団地のゴミ置き場の清掃を担当する。
 2棟30戸なので,本来なら 30週に1度のはずが
 前回(9月半ば)から3ヶ月弱で回ってきた。
 空き部屋がかなり増えたからね。
 いまの若い夫婦にはとても住めないとこらしい。

12/9
◆神之川温泉
 鹿児島市の最北部にある銭湯。
 家族湯がメインで,約40室。ほかに大浴場もある。
 廃業したはずなのに,営業していた。
 入口横にはウッドデッキと食堂がある。
 330円で大浴場に入れば,中は狭いがきれいだ。
 ただ,従業員の青年が,やたらマメに温度を測りに来る。
 後で調べてみたら,正式名称は「就労継続支援A型事業所・神之川温泉」
 障碍者が働く施設に替わっていたのだ。
 青年の「ひたすらな」まじめさもそれで理解できた。

12/10
◆学生による授業評価
 前期についての評価の数値にやや愕然とする。
 教員全体の中で,ぼくはほとんど最下位に近い。
 アンケートに学生が書き込んだコメントもすべて読む。
 それには誉め言葉が並んでいるので,ますます奇妙。
 つまり,二極分解しているのか?
 夜間部のゼミで,学生に泣き言をいうと
 「先生の良さがわからない者も多い」とまた泣かせる返答。

12/11
◆犯罪者
 学生に対する懲戒の規定が作られつつある。
 その案文を大勢の教員で議論し合う。
 素人談義だから,絡むのも虚しい。
 それよりも,そもそも懲戒が必要なのだろうか?
 学内の秩序を乱すというならまだしも
 学外における「違法」行為をも罰すべきか?
 大麻にせよ飲酒運転にせよ,犯罪は時代の産物だ。
 が,若者を社会の鋳型にはめるのが教育なら
 この種の懲罰も大学の責務かもしれん。
 などと考えつつ,居眠りにふける。

12/12
◆学びの友
 内田樹の新刊『日本辺境論』(新潮新書)を買って読む。
 あいかわらず感心させられ,考えさせられ,楽しい。
 しかし,思えば学生時代・院生時代の友人たちも
 毎日,この種の刺激的な話でぼくを楽しませてくれた。
 だから,できれば今のぼくも近くの人を楽しませたい。
 んで,努めて「変なこと」を言い続けている。
 ところが,この職場では誰からも相手にされない。
 ぼくの発言をおもしろがる人間はいないのである。
 語り合う相手はおろか,近寄る人すらいない。

12/13
◆粗食
 この一週間,ほぼ毎日,目刺しを食べてます。
 あとはご飯と味噌汁,そして頂き物の佃煮。
 あ,お米も知人(半農半遊)からの貰い物。

12/14
◆頼りにされる
 夜中,奧さんから電話でパソコンが不調だと。
 最近のマックはほとんどフリーズなど起こさず
 奧さんがSOSの電話をかけてくることもなくなった。
 しかも,多少の不具合は,最近は息子が相談相手らしい。
 ぼくに相談してくるのは珍しい。

12/15
◆理想像
 じいさんが自分の店の前でひなたぼっこをしている。
 日がな一日,人や車の往来を見て楽しむ。
 顔見知りが通りかかると挨拶する。
 それが昔の遊び仲間なら会話も弾む。
 客もたまに来るからめでたい。

12/16
◆軽侮
 路上で事務局長から「斉藤さん」と呼びとめられた。
 ふだん,ぼくは人から「先生」と呼ばれたくないくせに
 この突然の呼びかけにはちょっと驚いた。
 立ち話の口調もほとんどタメグチ。
 昔は,教員は職員から一応「先生」扱いされたが
 このごろは県庁職員の方が偏差値が高いせいか?
 たしかに,こちらの地盤沈下も進んでるからなあ。

12/17
◆統一教会
 仲正昌樹『Nの肖像』(双風舎)を読む。
 仲正は思想史研究で著作も多く,有名だが
 81年に東大入学以来 11年間,統一教会の信者だった。
 本書で自らの入会から脱会の経緯を告白している。
 入会は駒場寮の民青のせいだという。
 迫害されて信仰がつのったという図式だ。
 また,迫害は「信者」同士の近親憎悪と説明される。
 共産主義も「信仰」として同型なんだと。
 わかりやすいが,何だかねえ。

12/18
◆商売替え
 佐川光晴『牛を屠る』(解放出版社』を読む。
 出版社勤務から食肉処理業に転身した実話である。
 転職の理由は,ものの弾み。
 そのワケのわからなさに,むしろリアリティを覚える。
 あ,これは仲正の統一教会入信と比較して,の話ね。

◆ 16万アクセス
 半年で1万というペースで安定。


12/19
◆談笑
 奄美群島は琉球にも薩摩にも属さぬ「無国籍」地帯
 というテーマで講演会を催し,その後,講師と飲む。
 小難しいネタを肴に,バカを言い合って楽しむ。
 うちの職場から消えて久しい光景である。

12/20
◆隠退
 同僚で同世代の某はすでに退職後の計画ができてる。
 故郷(島)に戻り,私設図書館を開くのだ。
 利用者はあんた一人だろうと茶化せば
 それでもいい,と意に介さぬ。
 立派なもんだ。
 その点,ぼくはどこで暮らすかもノーアイデア。

12/21
◆ヤートコ
 年末ゆえ,ってこともないが,散髪に行く。
 外のクルクルは回っているのに,店主がいない。
 床屋のバーサン,死んじゃったか?
 数年前まで通っていたジーサン床屋に続き
 このバーサン床屋もアウトなのか?
 人は順繰りに死んでいくのが世のならい。
 ただ,新しい床屋を探すのが面倒だ。
 なんて考えていたら,バーサン,買い物から戻る。

12/22
◆マルセル・パニョル
 古本屋で『少年時代1・2』を見かけ,懐かしくて買う。
 別名『マルセルの夏』と『マルセルのお城』
 二つとも映画化され,90〜91年,それはパリで観た。
 おもしろかったので,原作を文庫本で買った。
 (流れで,滞在中に彼の戯曲なども 10冊ほど読んだよ)
 いま初めて翻訳を読むと,これが実に読みやすい。
 ぼくは原書を読んでいるのに,だいぶん印象が違う。
 あのときはただ字を目で追って
 それで読んだつもりになってただけ?

12/23
◆ソンタグ
 『死の海を泳いで』(岩波)を読む。
 副題「スーザン・ソンタグ最期の日々」
 政治評論家のデイヴィッド・リーンが母の死を描く。
 さすがにソンタグ,死に方も立派である。
 リーンは,ソンタグが19才で産んだ一人息子だそうだ。
 ソンタグは17才で結婚している。
 ぼくがふだん接している学生たちより若い。

12/24
◆過客(かかく)
 行きかふ年もまた旅人なり。
 忘年会で,県庁職員の楽しみ方をみて感心する。
 どうせ最長3年で配置換えだから
 その場その場で小さな幸せを見つける技に長ける。
 重たい絡みは野暮の極みらしい。
 ぼくの方がよほど田舎者なのだと悟る。

12/25
◆ Ensemble
 NHKのニュースでこのごろ「相……」が流行ってるという。
 タクシーの相乗り,酒場の相席,ツアーの相部屋など。
 今は人々の間に,ふれあい志向があるらしい。
 本当かしら?
 鹿児島で暮らすぼくの印象では逆だな。
 職場でもゼミでも「ふれあい」は忌避される傾向がある。
 映画愛好者の集まりですら,そうなのだ。
 語り合う会を催しても,一向に人は集まらぬ。

12/26
◆電気街
 上京したので秋葉原に立ち寄る。
 買いたいものはなく,ただうろついただけ。
 電気街としては凋落傾向だと察した。
 大人の玩具ショップが目立つところにある。
 老人になったおかげで,そういう店にも平気で入れちゃう。

12/27
◆土産
 鹿児島から送ったポンカンが届く。
 しかし,それも東京で買えないものではない。
 芋焼酎にいたっては鹿児島より多くの銘柄が酒屋に並ぶ。
 以前は喜ばれた明石家の軽羹も近所で買える。
 こういうのを差し出すと,相手は申し訳なさそうに笑う。

12/28
◆ INPUT
 教育研究職についたことによる弊害は
 本を読んでもアウトプットを意識しちゃうこと。
 業績が「産出量」で測られるご時世,自らの不毛を恥じる。
 以前は純粋に読書を楽しみ,学びを楽しんでいた。
 この初心の回復には,一種のリハビリが必要だ。

12/29
◆異端
 年末,夜の中央線は乗客が少ない。
 見渡せば10人ほどの客はみなケータイを見ている。
 本を読む者も,居眠りする者もいない。
 それを異様と思うのは時代遅れ?

12/30
◆ゴミ屋敷
 NHKのニュースで,鹿児島市のテロップが出た。
 自宅でゴミをためる近所迷惑のジーサンがいるらしい。
 話は全国に飛び,どこにも同様の人間がいると紹介された。
 退職教員,医師,看護師,公務員など,さまざまだ。
 孤独感と虚無感がつのれば,ああなる。
 あの〜,あれに比べれば,うちはきちんと整頓されてます。
 ご心配なく。(って誰に言ってる?)

12/31
◆不義理
 昨年に続いて今年も年賀状を書かないでいる。
 賀状は,自分が生きてることを知らせる仕掛けだが
 そういうことをアピールする必要もない。

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