2012年
 つぶやき

3/1
◆送別会
 組合主催の宴会に主賓の一人として出る。
 久しぶりに二次会まで参加して楽しんだ。
 ぼくのバカさが許されている空間ってのは
 まことに居心地がよく,バカ度がさらに増進した。

3/2
◆閑居
 哲学者スピノザの職業はレンズ磨き職人だった。
 生活のために昼はしこしこレンズを磨いた。
 その点ぼくは年金でそこそこ暮らせる。
 う〜む,四六時中思索に耽(ふけ)られるわけだが。

3/3
◆再々校
 またゲラが届き,翻訳文の手直しを続ける。
 一段とリーダブルな文章に仕上がっていく。
 なにしろ全国民が一度は読むべき古典の名著だ。
 ぼくも編集者も力が入っているのよ。

3/4
◆包丁
 学科から退職記念の品がもらえることになってる。
 何をもらえるかは退職者自身が希望できる。
 ぼくは台所用品をもらおうと思う。
 値段などを調べにデパートに行く。
 おー,上等なナイフは2万円を超えるね。

3/5
◆巣ごもり
 部屋にこもる生活に慣れようとしてきた。
 老後の生活はこれが基本ですからね。
 おかげでだいぶん慣れてきた。
 んでも,たまに人に会うと爆発的に言葉がほとばしる。

3/6
◆シェーバー Izumi Cleancut
 電気ひげ剃りを通販で買った。
 値段は2千円だが,性能いいぞ。
 ヒリヒリ感が全然ない。
 安物でも技術進歩してるのが偉い。

3/7
◆包丁(2)
 市役所前の黒田金物店は外観はボロボロだが
 じつは奥があって、品揃えは驚くほど立派だ。
 研秀(とぎひで)という独自ブランドの包丁を売ってる。
 日本刀づくりの技でつくられた包丁だ。
 なるほど、髪の毛をあてると ハラリと切れる。
 店のオヤジの解説にも力がこもる。
 値段も1万円以下なので、心が惹かれる。

3/8
◆風のように去りたい
 昨年退職した同僚には2万円相当の記念品が贈られた。
 昨年は教員の人柄ゆえに,基本の祝賀金1万円分に
 学科の教員からのカンパが加わった。
 今年は特段盛り上げず,基本の1万円のみで送り出される。
 それはむしろお互いに好都合で,お互いにありがたい。

3/9
◆蔵書処分
 本はなるべく捨てよう。
 引越先には本を置くスペースがないからね。
 原書(仏語が多い)もどんどん捨てねばならん。
 お金をはたいて買いそろえたものでも
 二度と(あるいは一度も)読まないものは捨てる。
 原書では古本屋にも売れないし。

3/10
◆古本屋 Liset(リゼット)
 電話したらすぐ来てくれた。
 弟子筋にあたる若い古本屋も呼んでくれた。
 二人のおかげで研究室とアパートの本が片付く。
 代金も(合計で)1万4千円と高めだ。
 鹿児島で古本文化を育てたい、と意気軒昂なのもよい。

3/11
◆三校!
 翻訳の校正ゲラがまた届く。
 この念の入れ様,尋常じゃないね。
 光文社の古典新訳文庫,すごいぞ。

3/12
◆自転車(クロスバイク)
 ぼくのは高級品じゃないが安物でもない。
 それでも4月には捨てる予定だ。
 が,ギアが壊れたよ。(ケーブルの断線)
 あと一ヶ月 乗るために 修理した。

3/13
◆手帳
 研究室の片付け(ゴミ処理)をしている。
 と,泥だらけの手帳の束が出てきた。
 1993年の洪水で泥水に浸かったものだ。
 抜けている年もあり、くっついて開けない頁もある。
 院生時代や滞仏生活の記憶がまだらに甦る。

3/14
◆ガリ版刷り
 学生時代の寮誌やサークル誌が出てきた。
 一橋寮(いっきょうりょう)の誌名は『橋人絶叫』だ。
 ぼくも短文を書いているが
 いかにも頭悪そうな文章で,恥ずかしい。
 むりに難しい言葉を使っているのも悲しい。
 もちろん,(遅ればせながら)ゴミ箱へ。

3/15
◆マルエン全集
 大月書店版のマルクス・エンゲルス全集。
 半分ぐらいしか揃えてないが
 貧乏だったので一冊ずつ買った。
 そして今,そのほとんどを泣きながら捨てる。

3/16
◆切れ味
 研秀(とぎひで)の包丁.良く切れます。
 心配していたカボチャなんかも,バターのように切れる。
 その他の野菜なぞは,包丁を当てるだけで切れちゃう。

3/17
◆語学テープ
 40年以上も前に友人からタダでいただいた。
 昔は高価だった Assimil の "French Without Toil"。
 研究室の奥で発見した。
 ほこりだらけのラジカセも見つかった。
 再生すれば,おお,ちゃんと聞こえる。
 なんだか感動しちゃったな。

3/18
◆栄養過多
 二日連続で送別会に出る。
 つまり,連日ゴチになってます。
 ぼくもそれほど嫌われているわけじゃないのね。

3/19
◆別の翻訳
 8年前,レイモン・アロンの『マルクスのマルクス主義』ってのを訳した。
 アロンはサルトルの論敵として知られる。
 本は3人で共訳したのだが,それぞれ知らない同士。
 ぼくは経済学を担当し,さっさと訳し終えたのに
 メインの人が8年間も作業を滞らせてきた。
 ぼくはとっくに出版の実現を諦めていた。
 その人から突然メールが来て、今年中に出したいとのこと。
 けっこうですね、とのみ返事を書いた。
 あ,本を出してくれるのは法政大学出版局です。

3/20
◆搬出
 研究室の本(私物)をアパートに移した。
 段ボールで30箱ほど。
 クロネコの男が3人がかりで運び出してくれた。
 料金は1万円だが,こっちは楽ちんだ。
 しかし,研究室にはまだゴミがたっぷり。

3/21
◆哲学カフェ
 2年前から 学内で 学生・教員を集めて開いてきた。
 3月は,学生の主導で街中に進出し 3回も開いた。
 1回目の題:「てげてげ」は死語?
 2回目の題:他人の元気は困りもの
 3回目の題:心は通いあうか

3/22
◆定期預金
 昔、卒業生に頼まれて信用金庫に預金した。
 そのすべてを解約するため,本店に行く。
 と,定期の解約はそれぞれの支店でするもんだそうだ。
 しかたなく市内各所を回るはめに。

3/23
◆拾う神
 かごしまフィルムオフィスで働く知人が
 ぼくの家財道具をすべてもらいたいという。
 ぼくは捨て場に困っていたので,ちょうどよかった。
 しかも,少し恩を売ることもできる。

3/24
◆ギター
 珍しくFMを聴いてたら,懐かしい曲が流れる。
 カタロニア民謡「アメリアの遺言」(←参考資料。約2分間)
 学生時代,ギター部にいたとき,よく聴いた。
 腕の立つ部員が弾いていた。
 こういう「泣かせ」系,ぼくも弾きたかったな。

3/25
◆地口
 発泡酒のCMで,「旨っ」の言葉に三浦友和が「牛」と応える。
 これでまた、ぼくは母を思い出した。
 ぼくが「うまかった」というと母は「牛負けた」と応える。
 また,「ありがとう」というと
 「蟻が十なら芋虫ゃ二十(はたち)みみず十九で嫁に行く」
 いま調べたら,これは香具師の啖呵売(たんかばい)の文句。

3/26
◆整理
 アメリカ映画を見ると,会社員が解雇される場面では
 机まわりの私物を紙箱に入れ,それを抱えて会社を去る。
 ぼくの研究室も,一箱分の私物が残るのみとなった。
 ぼくも箱を抱えて、後も振り返らずバス停に向かおう。

3/27
◆郵便
 買いすぎた年賀状や書き損じのハガキなど
 十数年分を,新しいハガキに交換する。
 Eメールで事足りる今日,この50枚のハガキ、どう使おうか?
 あ,ぼくの転居予告ハガキ,ご希望の方はご連絡を。

3/28
◆オーバーコート
 フランスで出会った貧乏青年が着ていたような
 ウグイス色のオーバーを20年ほど前に買った。
 敗残兵とかホームレスが着てるようなやつ。
 貧乏臭い=かっこいい,と思ったからだ。
 結局、一度も着ずに,捨てることにした。
 (その他の冬服も含めると,けっこうな山をなす)

3/29
◆見込み生産
 あらかじめ自分で勝手に翻訳しておけば
 出版社から声がかかったら,即座にそれを差し出せる。
 そういう達者な人がじっさいにいるらしい。(例:中山元)
 ぼくにはできない芸当だが
 老後の手すさびとしては,それもありかな。

3/30
◆待たれている?
 「こっちに来たら酒を飲もう」というメールが来た。
 「あんた誰?」と尋ねたら,高校時代の友人だった。
 彼は東京にいる同窓生グループの世話人。
 退職者には礼儀として言葉をかけるのだ。

3/31
◆ Adieu
 研究室の鍵を会計課に返す。
 あの人この人に別れの挨拶を……とも思ったが
 けっきょく,校舎に黙礼しただけで去る。
 三十一年を疾風のごとく駆け抜けた。

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