世間の大人

第2部の講義「現代社会論」(98年5月12日)中,学生に書かせたレポートの抜粋

自分は小学生の頃から塾に通い,中学・高校は私立の進学校に行き,鹿児島大学に入るために勉強してきました。鹿大の工学部に合格したのですが,親に勧められて試しに受けていた郵便局も合格していたので,むりやり郵便局に入らされました。
 郵便局に勤めながらも,大学に行きたいという気持ちがおさえきれず,県立短大に入ったのですが,自分は理系だったので,興味を持っていない経済や法律の授業に何か満足できない。
 別に何の目的もないのだが,ただ鹿大に行きたい,そのことばかり考えて,仕事をするのも嫌になって,強引に就職させた親を憎み,自分のやりたいことだけをしていこうと思いました。郵便局を辞めて,入試の勉強をしているのですが,2年間のうちに学力も落ちていて,どうせ合格するわけない,と思っています。
 今はもう何をする気も起こりません。

私は好きなときに好きなようにやる性格なので,学校に行くにしても,友達と遊ぶために行くようなもので,授業を受けるのもそのついでのようなものだ。
 私の友達は,高校時代,好きなようにやったら学校の制度から少々(?)ハズれていたらしく,先生方からかなり反感を買っていた。私は,自分のスタイルのとおりにマイペースしていた。私も友達もすべてのテストは実力で受けるものだと勉強などやっていなかったが,成績だけは良かった。
 なぜ先生方は,何も考えず勉強だけしかできない人間より,要領をおさえた私たちにつっかかるのか。いっしょうけんめい勉強して,いっしょうけんめい成績を上げていても,それ以外何もできないアホを知っているので,よけいにそう思った。
 私たちはほっとかれても,大学に行こうが行くまいが,てきとうに上手に世の中わたって行ける人間である。彼らは大学に落ちでもしたら,もうどうにもできない人間だろう。私の友人に髪の色がどーのとか,耳のピアスの穴がどーのとか言う前に,彼らに「勉強ばかりやってないで遊び方の一つでもおぼえろ」と言ってやる方が先なんじゃないかと思う。
 が,たった一つに熱中できる人間がうらやましくもある。目の前にあることだけに集中できたら,よけいなことは考えないんだろうな。

何が普通で何が普通じゃないのか,たまに考えることがあります。
 友人が今度結婚します。できちゃった婚です。今までにもそのようなケースが何人かいます。母は「そんなの,あんたがしたら許さない。ちゃんと順序よくしなさい」と言います。順序って何でしょう。結婚より先に子供ができていたらなぜいけないのですか。だから昔の人の考えは嫌いです。
 祖父なんかはよく戦争に行ったことを自慢げに話しますが,私からすれば,政府が勝手に始めたことにつきあわされただけで,あんな危ないことをして何自慢しているんだろう。何人も人を殺して何よろこんでいるんだろうと思います。
 結婚の話に戻りますが,じっさい自分ができちゃっただったら,素直によろこべません。むしろ嫌です。一人の女にしばられたくありません。もっと遊びたいと思っている人はたくさんいるはずです。

制度の中にいられる自分に安心感を覚えて,それから外れないように必死に努力する。そして,それから外れたことをした者に罵声,陰口などを言ったりして,いかにも自分は正しい位置にいるような気分になっている。
 制度の逆機能については,私の昔の職場がそうだったと思う。24時間フル回転の電子部品づくりで12時間交替の2交替制でした。1人,5〜6台の機械を受け持ち,1台当たり1交替中10万個包装リールにつめなければなりませんでした。つめるのは機械がしてくれるのでいいのですが,その機械がよく故障し,その修理に手間がかかり,しかもすべての機械がそのような調子ですので,修理に走り回っているようなかっこうでした。作業を楽にするはずの機械がかえって作業をつらくしているようでした。
 このような機能はまだたくさんありますが,みんなそれに慣れてしまっているため,あまり不自然に思わなくなっているのだと思います。

自分は今けっこう自分が好きだ。60%位は好きだと思う。さまざまなことが制度化され,常識になり,習慣になり,それこそが正しいと決めつけて生きている大人たちではないからだ。夢を持っている。周りの奴に夢を聞いてみると,固定化されたイメージが出てくる。想像力のかけらもない奴もいる。
 自分が一番毛嫌いすることは,そんな現実に何の疑問ももたないことだ。「自分たちの制度が正しくて,他はまちがっている」。その意識自体に問題があることをわからない奴が多くて,また説明してわかってもらう力が足りない自分がいる。失望して周りの奴のようになったこともある。
 判で押したような生き方をして,疑問を持たず,また持っても挑戦する気力すらない大人,それを常識と言って子供に押しつける大人,「考えが足りん」と批判するだけの奴。この世の中で正しいことは一つじゃないんだ,と言いたい。