ラスキン『ムネラ・プルウェリス』(1872年)の「序」を訳した。


翻訳の出版を提案するためであった。
が、その提案をする前に、プルードンの翻訳の「話」が来た。
それでラスキンの翻訳はやめた。
ただ、「序」だけでも読みたい人はいると思われるので
ここにPDF文書として掲載したい。


ちなみに「ムネラ・プルウェリス」という書名について一言。

Munera pulveris はラテン語で「一握の砂の贈り物」の意である。
墓にかける「手向けの砂」のことだ。
さらにその意味となると、解釈がわかれる。

もともとはホラティウスの『歌集』(1の28)からの引用。
その詩の現代語訳は、英語でも日本語でも
訳者によって実に多様。(解釈のむずかしさは定評があるみたい)

ギリシャの哲学者・軍人・政治家であるアルキタスが
海で難破して死んだことをうたう。
埋葬しないと死体は冥界をさまようことになっている。
せめて一握の砂をかけて埋葬の形にしてあげよう。
現代語訳のひとつによれば、通りかかった水夫が砂をかける。
別の訳では、アルキタスの塚の近くに打ち上げられた水夫の死体に
誰か砂をかけてあげましょう、という話になっている。
私(斉藤)は前者が正解だろうと思う。

では、砂をかける意味は何か?
ある人は、物質的な豊かさに「質素」で対抗する意味だという。
私は、政治経済学を葬る、という意味だろうと思う。

2012.07.01 斉藤悦則

『ムネラ・プルウェリス』序の訳のPDF(307KB)